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ノンアルコールビールを巡る サントリー アサヒ特許紛争

平成27年3月20日付東洋オンラインの「サントリーとアサヒ,訴訟前の熾烈な"抗争"」という記事で,ノンアルコールビールを巡るサントリーがアサヒを提訴するまでの過程が紹介されています。

記事によると,サントリーによる提訴までに,両社の書面によるやりとりは14回に及んだようです。

サントリーは,平成25年10月7日,アサヒに対し,「エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるビールテイスト飲料であって,pHが3.0以上4.5以下であり,糖質の含量が0.5g/100ml以下である」ことを特徴とする22の特許請求項からなる特許権(特許第5382754号)が近日登録予定であること,ドライゼロは上記特許権を侵害すること,ドライゼロの製法についての説明を求める内容だったようです。

これを受けて,アサヒは,平成25年10月21日の回答期限の延長を申し入れ,同年11月5日には,上記特許権に無効理由が存在すること,ドライゼロの製造,販売が上記特許権の侵害とはならないことを内容とする回答を行ったようです。

つまり,アサヒは,平成25年11月5日の時点で特許権侵害の主張に対して無効の抗弁を主張することを表明していたことになります。

サントリーは,アサヒの回答を受け,同社に対して特許無効を主張する根拠に関する説明を求め,アサヒが無効理由を記載した書面で説明,さらにサントリーがアサヒの主張に反論を行ったことで両社の主張は,平行線をたどることになったようです。

そして,サントリーがアサヒに対して面談を申し入れ,平成26年1月8日にアサヒビール本社において両社の面談が行われたようです。なお,この面談では,サントリーがドライゼロの製法変更を含めた和解協議を提案したが,アサヒはこれを拒否し,面談は物別れになったようです。

サントリーは,平成26年4月10日,アサヒに対し,提訴を示唆した上で同年4月24日までに具体的な和解案を記載した書面を送るよう求めたところ,アサヒは,製法の変更を拒否したようです。

さらに,サントリーは,平成26年11月27日,アサヒの小路明善社長宛てで,ドライゼロの製造・販売の中止などを求め,書面到着後20日以内に対応しない場合は提訴することを通知したところ,アサヒは,同年12月15日,サントリーの新浪剛史社長に宛てで訴訟やむなしの回答を行い,今回の法廷闘争が開始されたようです。

特許権は,出願の後,審査請求を行うと特許庁の審査官が審査します

審査官は,出願発明の新規性進歩性等の登録要件が備わっているか審査し,特許権を付与することを拒絶する理由を発見することができない場合に出願発明に特許権を付与することになります。

特許庁は,特許権付与を拒絶する理由を発見できない場合に特許権を付与するわけですから,特許庁から付与された特許権が客観的にも特許要件をみたすとは限りません。

審査官が確認することができる公知の技術は限られていますし,一件あたりの審査にかける時間についても限界があります。

この結果,客観的には特許要件が満たされない場合であっても,審査官がこれを発見することができない場合には特許権が付与されるわけですから,本来特許権を付与してはいけない発明に特許権が付与される,つまり無効理由を有する特許権が存在することになるわけです。

特許法では,無効理由が存在する特許権に基づく権利行使を制限することができる「無効の抗弁」というものが認められています。

今回,アサヒが主張しているのは,この「無効の抗弁」です。

無効の抗弁では,世界中に存在する公知の技術と比較して無効理由が存在すること主張,立証していきます。

今回のアサヒのように特許権侵害が認められた場合の損害賠償額,将来得ることができたはずの利益の金額が莫大な金額になる場合には,特許庁の審査以上に多くの資料,時間を費やしてチェックするわけですから,特許庁での審査より厳しい目で特許要件が存在するかどうかを確認されるわけです。

訴訟に至るまでのアサヒの対応だけを見ていますと,アサヒも相当の自信をもって今回の訴訟に臨んでいることが窺われます。

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