弁護士視点で知財ニュース解説

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あつ森 偽造amiiboカード

昨今の外出自粛の影響もあり,任天堂スイッチの人気が衰えることがありません。

店舗での,ゲーム機の入手が困難な状況が継続しており,ネット上ではプレミアがつき,高額で取引されています。

このような任天堂スイッチの中でも,特に人気が集中しているゲームソフトが「あつまれどうぶつの森」です。

「あつまれどうぶつの森」は,ゲームの中で他の人と意思疎通できるという特徴があり,「あつ森」と呼ばれて社会現象化しているところがあります。

「ある森」人気を受け,限定的に販売されている「amiiboカード」も,ネット上では非常に高額な値段で取引され,3枚300円で発売されたものが,カードの種類によって1枚10,000円以上で販売されています。

このような「あつ森」の「amiiboカード」ですが,プレイヤーが役場に行き,役場の「たぬポート」にタッチして,コントローラの「Rスティックボタン」に 「amiiboカード」の「amiibo」の部分をタッチするとスキャンが完了するという仕組みになっています。

カードの情報がスキャンされると,カードの表面に印刷された住民(キャラクター)を,プレイヤーの「島」に招待することができ,プレイヤーは住民(キャラクター)と触れ合う,撮影スタジオで記念撮影を行うなどして楽しみ,当該住民のポスターを入手することができたりします。

「あつ森」は,外出を自粛しなければならない人にとって,まさしくピッタリのゲームであり,販売にあたり数量,期間を限定して販売される「amiiboカード」がネット上で高額化するのは,当然のことであると思います。

ネット販売サイトが普及し,誰しもが簡単に商品の売主になることができ,買主とのマッチングが容易になりますと,無制限の市場原理が働き,数が限定され,人気が集中する商品の価格は,当初の何倍,ときには何十倍の価格で取引されるようになります。 つまり,ネット上では,単発的,かつ,一時的な「バブル」が容易に発生するわけです。

価格が高騰すると,偽造品製造の採算がとれるようになり,偽造品が現れる,偽造品の採算性が高まれば高まるほど,偽造する者も増え,偽造品の数が増えるという関係にあります。

「あつ森」の「amiiboカード」がネット上で高額で取引されるようになると,必然的に,その偽造品もネット上で出回るようになるわけです。

現在,報告されている偽造品の特徴は, 本物が紙製であるにもかかわらず,プラスチック製である 本物と比べて表面がザラザラしている 本物と比べて色が薄い 表面の誕生日の記載が,本物は月日の順だが,日月の順で記載されている Rステックと接触させる「amiibo」と記載された部分が,本物は四角囲みであるにもかかわらず,偽物は丸囲みになっている というものです。

偽造品は,経時的に巧妙になってきますので,「あつ森」の「amiiboカード」が人気が継続し,ネット上での高額取引が継続する限り,費用を投じて精巧な偽造品を製造することが可能になりますので,今後,本物と区別することが困難な偽造品が出回ることも否定できません。

このような偽造「amiiboカード」ですが,これを製造すること,販売することに,どのような法的問題があるのでしょうか。

今回は,刑事罰に焦点をあてて説明します。

cont_img_56.jpg「amiiboカード」の表面に印刷されている「あつ森」の住民(キャラクター)の絵は,著作権法上では,絵画の著作物にあたり,著作権は,任天堂に帰属しています。

このようなキャラクターの絵を偽造カードに複製する行為は,任天堂の著作権の一つである複製権を侵害していることになります。

そして,偽造カードを製造するにあたってキャラクターの絵を複製するというのですから,故意に任天堂の複製権を侵害していることになるわけです。

著作権法では,故意に著作権を侵害した場合,刑事罰の対象になると定められており,具体的には,10年以下の懲役,1000万円以下の罰金,または,その両方を科すると規定されています。

また,Rステックと接触させる部分に記載されている「amiibo」,その下に記載されている「animal crossing」は,任天堂の登録商標です。 そして,任天堂は,販売しているカードに「amiibo」や「animal crossing」と表示することにより,当該カードが任天堂によって提供されているものであることを示しています。

ですから,偽造カードに「amiibo」や 「animal crossing」という表示を付する行為,これらの表示を付した偽造カードを販売する行為は,任天堂の商標権を侵害することになるわけです。

商標法では,故意に商標権を侵害した場合,刑事罰の対象になると定められており,具体的には,10年以下の懲役,1000万円以下の罰金,または,その両方を科するとされています。

さらに,「あつ森」のキャラクターの絵ですが,これは,先ほど説明したとおり任天堂の著作物なのですが,単なる著作物ではなく,あつ森を楽しんでいる者からすれば,キャラクターの絵を見れば,任天堂が提供しているカードであると判断できるという機能を備えています。

つまり,キャラクターの絵が,任天堂の商品である「amiiboカード」出所表示の機能を有しているわけです。

不正競争防止法では,他人の周知な出所表示を使用し,譲渡するなどして,誤認混同を起こさせるおそれがある行為を不正競争行為と定められており,このような行為を,不正の利益得る目的,あるいは,他人を害する目的で行った場合には,刑罰の対象になると定められています。

「あつ森」のキャラクターの絵は,周知な任天堂の出所表示にあたりますので,偽造「amiibo」カードを製造する行為,販売する行為は不正競争行為にあたり,不正な利益を得る目的も認められますので刑罰の対象になるわけです。

具体的には,5年以下の懲役,500万円以下の罰金,または,その両方が科されるということになります。

また,偽造「amiiboカード」を本物のように装って販売し,代金を支払わせた場合には,刑法の詐欺罪にあたり,10年以下の懲役となりますし,仮に,サイトに出品しているだけで,代金を支払わせるというところまで行っていないとしても,詐欺の未遂罪が成立し,未遂罪の場合には減刑することが可能であるものの,基本的には詐欺の既遂罪と同様の刑罰を科されることになります。

以上を整理しますと, 著作権法:偽造カードを製造する行為を故意の複製権侵害として処罰 商標法:偽造カードを製造する行為,偽造カードを販売する行為を故意の商標     権侵害として処罰 不競法:偽造カードを製造する行為,偽造カードを販売する行為を故意の不正競争行為として処罰 刑法:真正品であると誤解させて,金銭を支払わせる行為,支払わせようとする行為を詐欺罪として処罰 となります。

つまり,偽造カードを製造した者については,著作権法,商標法,不正競争防止法によって処罰されることになり,偽造カードを販売した者については,商標法,不正競争防止法,刑法によって処罰されることになるのです。

ネット上での偽造品の駆逐は,ネット販売サイトの運営者が掲載を削除するのが最も効果的です。 ネット上での取引は,取引市場の一角を担うに至っており,多くの者が利用するネット販売サイトは,限られた者によって運営されています。

ネット販売サイトの運営業者は,取引市場の一角を担う取引のインフラを提供する事業者としての自覚,責任が求められると思います。

偽造品であることの通報があれば,出品者に確認して偽造品であることが確認を行い,偽造品であることの確認ができた場合には直ちに出品を削除する,出品者が確認行為に応答しない,応答するものの確認作業に協力しないような場合にも出品を削除するというルールが確立され,これを確実に実施していくことが求められています。

なお,通報があったにもかかわらず,ネット販売サイトの運営者がこれを放置し,新たな被害が発生した場合には,ネット販売サイト運営者は,偽造カードの製造者・販売者とともに連帯して損害賠償責任を負うことになる可能性が極めて高いと思います。

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