弁護士視点で知財ニュース解説

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リンクだけで著作権侵害!?

欧州司法裁判所は,無許諾で公衆送信されているコンテンツに対して「リンクを貼る行為」が著作権侵害になり得ると判断し,世界中で話題となっています。

そもそも,「リンクを貼る」という行為は,不特定多数の者に対してリンクの対象となるコンテンツの所在を紹介するだけの行為に過ぎず,リンクの対象となるコンテンツを複製あるいは公衆送信しているわけではありません。

そして,単純に「リンクを貼る」という行為は,日本だけでなく,米国,欧州においても著作権侵害にはあらたないと考えられてきました。

cont_img_39.jpg「リンクを貼る」行為は著作権侵害にはあたらないという考えを悪用して不正に利益を得ているのが「リーチサイト」です。
いわゆる海賊版は,海外のストレージサイトにアップロードされ,アップロードした者もサイト運営者も海賊版の存在を積極的にアピールすることはありません。
そこで,海賊版の所在を明らかにし,不特定多数の者が閲覧できるような状態にするのが「リーチサイト」といわれるものです。

「リーチサイト」は,ストレージサイトにアップロードされている非常に多くの海賊版コンテンツをリンクしています。
海賊版の閲覧,視聴を求める者は,海外のストレージサイトから一つずつ海賊版にアクセスしなくとも,「リーチサイト」にアクセスするだけで要領よく海賊版を閲覧,視聴できるわけです。他方,リーチサイトは,サイト上の広告収入やストレージサイトからの紹介手数料を得ています。

このような「リーチサイト」は,「リンクを貼る」という形式的には著作権侵害と評価することができない行為を行っているだけであったとしても,先行するコンテンツの違法な複製や違法な公衆送信を積極的に利用して,収益を得るという目的を達しているわけですから,先行者の違法行為を承継的に利用しているものとして著作権侵害であると評価することは可能であると考えています。

「リーチサイト」の問題は,「リンクを貼る」という行為に問題があるのではなく,違法に複製,公衆送信しているストレージサイトを積極的に利用して収益を得ているというところに問題があり,この積極的な利用により収益を得ているという行為に対して法的に著作権侵害であると評価を加えていくというものです。

なお,「リーチサイト」の問題は,日本においても,立法的対策も含めて議論されているところですが,法的規制だけではなく,プロバイダによるサイトブロッキング,プラットフォーマによるサイトの削除等,物理的な対策も必要になるところであり,議論を深め早期に対策が施されることが期待されているところです。

他方,欧州司法裁判所で判断された事例は,「リーチサイト」のような問題などではなく,著名人のヌード写真を独占掲載する予定であったところ,何者かサイトに流してしまい,その写真の存在を,リンクを貼ることで広めたというものです。
このような事例において,「リンクを貼る」という行為を公衆送信に該当するとして著作権侵害であると評価することには無理があると考えざるを得ません。

そして,今回の欧州司法裁判所の判断において特に問題と思われるのは,「リンク先が無許諾でアップされたコンテンツだと知っていたか,知るべきだったとき」にはリンク自体が公衆送信にあたるとし,「営利目的でリンクを貼る際には侵害コンテンツかどうかチェックすべきであり,侵害を知っていたと推定される」と判断されてたところです。

そもそも,公衆送信とは,各国によって厳密な定義は異なるものの,概要,送信手段を用いて不特定の者が閲覧,視聴できる状態におく行為を指し,行為者の主観的な認識とは関係ありません。
ところが,欧州司法裁判所の判断のように,違法コンテンツであると認識していた,あるいは知りうるべきであったという行為者の主観的事情によって公衆送信にあたるか否かが決せられるというのは,個人的にはどうにも腑に落ちません。

営利目的の場合にはリンク先のコンテンツが違法性を帯びているとの認識が推定され,侵害の認識が認められる場合にはリンクが著作権侵害(公衆送信権侵害)にあたると評価されるわけですから,営利目的でリンクを貼る際に委縮してしまうことは当然のことであり,このことがネットの伝達機能に与える悪影響は非常に大きなものであることは誰しもが容易に想像できるところです。

今回の欧州司法裁判所の判断は,私たち一人ひとりにとって眼前の問題であるとの認識をもって議論を行っていく必要があるのではないでしょうか。

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