弁護士視点で知財ニュース解説

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コピー商品の輸入 法改正

海外の業者からコピー商品を輸入する行為


コピー商品の輸入が自己使用目的であれば,商標権を侵害することなく,商標権を侵害する商品の輸入を禁止している関税法にも違反することはありません。


そもそも,商標法では,

「人の知覚によって認識することができるもののうち,文字,図形,記号,立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合,音その他政令で定めるもの」(これを「標章」といいます。)を,

「業として商品を生産し,証明し,又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」

をいうと定義されています。

つまり,「業として」生産したり,譲渡する者でない,自身で使用する者のもとでは,コピー商品に付されたロゴマークなどは,標章であっても商標ではないわけです。

商標権は,あくまで商標に対して及ぶ権利ですから,商品に商標でないロゴマークなどが付されていても商標権が及ぶことがなく,結果として商標権を侵害していないということになるのです。

少し理解することが困難であると思いますが,これについては,他の記事youtube動画においても説明していますので,参考にしてください。


2021年5月に公布された(公布から1年6ヶ月以内に施行されます。)改正商標(同時に商品等のデザインを保護する意匠法も改正されました。)により,自己使用目的であっても,コピー商品の輸入ができなくなると言われていますが,上記したことは,商標法の改正によって変わることはありません。


2021年の改正で変更されたのは,商標法の「輸入」という概念を拡張し,海外の販売業者による日本への持ち込みを規制の対象にするというものです。


商標法では,商標を使用する行為が規制の対象になるのですが,
商標の使用に,

「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回線を通じて提供する行為」

があります。

「輸入」という言葉は,通常,例えば,日本人が日本国内に商品を持ち込む行為をさし,商標法においても,そのようなものと理解されていました。

ところが,今般の改正で,

「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為」が「輸入」に含まれるとされました。

コピー商品が海外から,まさに日本に持ち込まれるとき,

自身で使用する目的を有する者のもとでは,コピー商品に付されたロゴマーク等は商標ではありませんが,海外でコピー商品を販売している業者のもとでは商標にあたります。

今般の改正では,まさに日本に持ち込まれた商品について,海外の業者が行っている部分ととらえて商標権侵害であると評価するものです。

したがって,自身で使用する目的でコピー商品を輸入する行為は,これからも商標権侵害ではありませんが,海外の販売業者が,自身で使用する目的の人を使ってコピー商品を日本に持ち込ませる行為が商標権侵害となり,関税法に違反するため日本に持ち込むことができないということになるわけです。

自身で使用する目的でコピー商品を購入した方は,積極的にコピー商品を輸入させる等の通常の売買の範囲を超えた働きかけを行っていない限り,法改正後も商標権や関税法に違反することにはならないと考えますが,商品代金を支払っているにもかかわらず,商品が届かないということにはなります。

そして,輸入できないことを理由に,海外の業者から代金の返還を受けることは,事実上不可能であると考えておいた方がよいと思います。

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