弁護士視点で知財ニュース解説

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無料公開された著作物 無断転載は損害賠償の対象

cont_img_56.jpgツイッターに投稿したイラストを「まとめサイト」に無断で転載されたとして,イラストレーターが損害の賠償を求めた裁判で,東京地裁が30万円の賠償を命じる判決を下しました。

サイト側は,無料で公開されたイラストは誰でも閲覧でき、ネットの情報が拡散するのは周知の事実であり,転載されても原告に損害は発生しないと主張していましたが,東京地裁は,このようなサイト側の主張を退ける判断を下したことになります。

ツイッターでは,フォロワーがリツイートし,リツイートを行った者のフォロワーが,さらにリツイートする,これが繰り返されることにより記事が拡散され,多くの者が目にすることになります。

ツイッターで拡散された著作物は,ツイッターに登録した者であれば誰でも無料で閲覧することが可能になるわけですから,それを無断で使用した場合に損害が発生するのかという疑問は,素朴な疑問としては理解できなくありません。

しかし,現実の社会では,著作物を利用する者が,著作物に表現された思想または感情を享受して,知的・精神的欲求が満たされることから対価が支払われています。

そして,このような現実社会における著作物の利用と対価の支払いとの関係を前提にすると,著作権は,著作物に表現された思想または感情の享受を目的とする行為が行われた場合に,権利者に対価回収の機会を付与する権利ということになります。

無料で公開され,多くの人が目にすることができる状態であったとしても,著作権者が対価回収の機会を放棄しているわけではありません。

ですから,著作権者が対価回収の機会を奪われた場合,無断で転載されたような場合には著作権侵害が成立し,差止めや損害賠償の対象となるわけです。

ただし,ツイッターの利用規約では,「埋め込み」機能(元の投稿画面にアクセスでき,アカウント名が明示される機能)を使用した場合,他のサイトへの転載が認められています。

東京地裁の判決においても,「ツイッター社の条件に従えば、第三者が投稿を使用できる」と判示しており,「埋め込み」機能を使用して著作物を拡散させた場合には,著作権侵害が成立しないことを示唆しています。

東京地裁は,ツイッターの利用者が,ツイッターが設定した利用規約の下でサービスの提供を受けているのであり,利用者が利用規約に制約されることを前提に,「埋め込み」機能を利用した場合,対価回収の機会を放棄しているという評価したのだと思います。

なお,ここで問題となっているのは,著作権そのものの放棄ではなく,著作権に基づく対価回収の機会の放棄です。

著作権法では,著作権を放棄する手続や著作権を放棄した場合の効果について規定されていません。

仮に,著作権者が著作権の放棄を宣言し,それが一定数の者に認識されているに至った場合,後日,著作権を行使した場合には,信義誠実の原則に反する,権利の濫用であるとの理由で権利行使が認められなくなるのではないかと考えています。

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