弁護士視点で知財ニュース解説

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映画「カメラを止めるな!」は著作権侵害?

cont_img_74.jpg「映画『カメラを止めるな!』は私の作品をパクった」と主張する舞台演出家和田亮一氏の記事が週刊誌「FLASH」9月4日号に掲載され,話題になっています。

映画「カメラを止めるな!」は,上田慎一郎監督が,脚本家と元劇団員舞台とともに舞台「GHOST IN THE BOX!」の映画として制作が開始されたそうですが,プロジェクトは頓挫し,その後,上田監督が元劇団員とともに脚本を大幅に書き直した上で英画化されたようです。

和田氏は, 「構成や大まかな設定部分はそのまま」,「みんなで何カ月もかけて稽古したり,バイトとの両立で眠かったり,理不尽なことに怒ったり,集客うまくいかなくてイライラしたり,本番は楽しかったり,あの日々が,あの作品が軽く扱われ,さらには今,『オリジナルストーリー』として世の中に出ているのが本当に許せません」と訴えています。

「FLASH」の記事によると,和田氏は,著作権を侵害されたとして訴訟の準備を進めているとのことですが,法的に和田氏の主張は認められるのでしょうか。

「FLASH」の記事における和田氏の主張は,映画「カメラを止めるな!」の構成や大まかな設定が「GHOST IN THE BOX!」と同じというものです。

他方,「カメラを止めるな!」を製作したENBUゼミナールは,公式サイトで,上田監督が和田氏の舞台に着想を得て映画を企画・製作したことを認めているものの,「映画は上田監督自身による脚本,監督,編集というように,舞台とは独自の形で進め,ストーリーは舞台とは全く別物である上,脚本の内容も異なる」と反論しています。

和田氏の主張とENBUゼミナールの反論は,事実関係においては非常に整合しており,映画「カメラを止めるな!」と「GHOST IN THE BOX!」とが構成や大まかな設定において同じであることを両者が認めていると判断することができます。

仮に,そうであった場合に,構成や大まかな設定が同一であることで映画が舞台の著作権を侵害することになるのでしょうか。

過去に,NHK大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』が,映画『七人の侍』の著作権を侵害しているとして,訴訟が起ったことがあります。

この訴訟で,知財高裁は,二つの作品の類似点・共通点は,アイデアの段階の類似点・共通点にすぎないとして著作権侵害を否定しました。

著作物が生み出される過程には,作品の時代や環境といった背景事情の設定,それを前提とした作品としての構成や,大まかなストーリーを考える構想の段階があり,それを前提に,具体的な脚本が制作されていくことになります。

そして,著作権法が保護するものは,あくまで脚本という形で具体的に製作されたものであって,設定や構成,ストーリーの大枠などではなく,著作権侵害を主張するためには具体的な表現物との比較で類似すると主張する必要があるのです。

報道された内容だけでは必ずしも判断することができませんが,一般的に構成や大まかな設定が類似していると主張するだけは著作権侵害が認められることはありません。

「GHOST IN THE BOX!」の表現部分と「カメラを止めるな!」の対応する表現部分とを対比することによって,著作権侵害を主張する必要があります。

なお,「GHOST IN THE BOX!」は,和田氏とは異なる脚本家が制作した脚本がベースになっており,演出家である和田氏などが脚色を加えて完成したものであると想像されます。

このような場合,脚本をベースに和田氏が独自に創作した部分を特定し,当該部分と,「カメラを止めるな!」の該当部分の比較を行った上で著作権侵害を主張する必要があるという問題もあります。

設定や構成が類似するためにある作品を目にして他の作品を連想するということは少なくありません。 しかし,それだけでは著作権侵害にならないということに留意する必要があります。

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