弁護士視点で知財ニュース解説

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意匠法 保護範囲拡大

st312.jpg2019年特許法等の一部を改正する法律案が閣議決定され,法律案が公表されています。

今回の法律案には,意匠法による保護の対象として建築物(建築物の部分を含む。)と画像(機器の操作のように供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの)が追加されることになりました。

画像に関しては,現在の意匠法でも,物品または,これと一体として用いられる物品に表示される操作用の画像については保護の対象になっていましたが,今回の改正により,物との結びつきが解放され,純粋に画像が保護の対象になる上に,画像の内容も操作用画面に限定されないことになりましたので,あらゆる物に投影される画像が意匠の保護の対象になることを意味しています。

また,商標法では,建築物の外観に企業名が表示されているものは,建物外観を看板と見立てて,立体商標として登録されている例があります。

そして,仮処分の決定ではありますが,店舗内部の外観が不正競争防止法の出所表示に該当するとして,類似する店舗内部の外観の使用を差し止める内容の決定が,平成28年12月19日に東京地裁で下されていました。

店舗の外観や内装は,商品やサービスを提供するにあたっての出所を表示するものとして機能しているわけですが,一般的には「店舗デザイン」と呼ばれているように,その第一義的には「デザイン」に属するものであり,意匠法によって保護されてしかるべきものです。

日本のような成熟した市場では,需要者は,「もの」から「体験」に価値をおくようになっており,事業者としては,より高い質の「体験」を提供することが需要になってきています。

「体験」を提供していく中で,店舗の外部や内部のデザインは重要な位置を占めており,事業展開を行う上で,店舗の外部やデザインの意匠登録が重要なものとして位置づけられていくと思います。

問題は,店舗デザインを意匠登録するにあたっての特許庁での運用や裁判所がどのように考えるかというということです。

商標の例ではありますが,立体商標は,平成8年に制度が設けられましたが,商品そのものの形態の登録が認められるようになるまで15年程度の時間を要しました。

商品形態は,商品が果たすべき機能により基本的な形態が決定づけられている,他者の商品形態の選択の余地が不当に狭くなるというのが,立体商標として登録されなかった主な理由でした。

意匠法は,もともと,「物品」という特定の機能を果たし,基本的な形態が機能によって決定づけられるという制約がある中で行われるデザインを保護する法律ですので,立体商標のような問題が発生することはないと考えていますが,他者の店舗デザイン選択の余地との関係で登録の要件が非常に限定的なものとなる可能性があります。

これから特許庁で作成されることになる審査基準についても目が離すことはできないと考えています。

なお,意匠法によって登録が認められる建築物の外部,内部のデザインは,新規のものである必要があります。

既に世の中に存在するものは,意匠登録が認められません。

ですから,既に存在する店舗の外部や内部のデザインは,繰り返し使用されることにより出所表示としての機能を獲得しているものに限り,不正競争防止法によって保護することを検討しなければなりません。

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