弁護士視点で知財ニュース解説

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プラットフォーマー規制 基本原則

cont_img_56.jpg政府は12月18日,プラットフォーマーと呼ばれるIT大手の規制に関する基本原則を公表しました。

プラットフォーマーは,インターネット上にサービスを提供する「場」を設け,それを利用する利用者の情報を吸収することにより巨大化しました。

インターネット上でのサービスの提供は,従来型の企業のように生産設備を拡大する必要がなく,サービス拡大に必要とする費用が比較にならないほど低額で済み,かつ,利用者が増えるほど利便性が増すネットワーク効果によって,急速な寡占化が進むという性格があります。

プラットフォーマーは,このようなインターネット上でのサービスの提供の特徴を活かして,利用者に関する膨大なデータ(ビッグデータ)を獲得し,データを用いて個人の属性などを推測(プロファイリング)し,利用者に適した内容の広告(ターゲティング広告)を行うことで,市場における優越的な地位を獲得しました。

ところが,プラットフォーマーが市場における優越的地位を獲得したことにより,プラットフォーマーによる優越的な地位の濫用が懸念されるようになってきました。

実際に,アマゾンジャパンが,アマゾンにおいて販売を行っている国内の業者に対して,「協力金」と称して販売金額の1?5%の支払いを求め,「協力金」の支払いを拒否した事業者に対しては同じ割合の金銭を「販促費」名目で支払うように求めていたということが問題になっています。

また,プラットフォーマーによる優越的地位の濫用だけでなく,膨大な情報が流出する問題,プロファイリングの結果が複数の企業で共有されることによって,特定の者の経済的,社会的な行動が制限されることも問題視されるようになっています。

例えば,特定の個人のデータが信用スコアリングに使われ,それが融資の審査や就職の際の判定等に使われ,融資を受けることができない,就職することができないといった問題が発生することが懸念されています。

ところで,プラットフォーマーが保有するビッグデータは,個々の利用者に関する情報の集合体であり,個々の利用者がデータ創出に寄与したものです。

このようなデータ創出に寄与した者に,データの利用・活用権限を認めるというのが「データ・オーナーシップ」の考え方です。 このような考え方を前提に,不正競争防止法に新たな規定が設けられた(2019年7月施行)のが限定提供データに関する一連の不正競争行為です

第三者に提供する相当量の情報については,営業秘密のように厳格な管理が行われていなくても保護されることになるわけですが,これを裏返してみれば,利用者がデータ創出に寄与した情報については第三者に提供することを促しているといえるのです。

しかし,グーグル,アップル,フェイスブック,アマゾン(GAFA)のような世界的な巨大企業が,今回の不正競争防止法の改正を受けて「データ・オーナーシップ」の考え方を自発的に実践し,市場における優越的地位を手放すことは期待できません。

また,プロファイリングの問題は,市場における優越的地位の濫用とは,異なる観点で対応を行っていく必要があります。

政府は,現在,アメリカや欧州と協力してデータ利活用の国際的なルール作りに乗り出しているのですが,それとともに国内法を整備するにあたっての基本的な考え方が示されたものが,今回の基本原則です。

基本原則では,データが金銭と同様に経済的価値があるものとして確認され,プラットフォーマーのサービスを無料で受けていたとしても,消費者がデータを提供していれば対価を支払っていると言い換えることが可能であるとされています。

また,プラットフォーマーがサービス提供の代わりに膨大なデータ提供を個人に強要すれば「優越的地位の乱用」にあたる可能性があるとされています。

そして,プラットフォーマーが優越的な地位を濫用して,中小企業に不利益な取引を強いることを防止するため,契約条件の開示を求めることが検討されます。

さらに,プラットフォーマーによるスタートアップ企業の買収により,公正な競争が阻害されるおそれ,データが集中することで優越的地位を獲得し,濫用するおそれが認識されているところ,公正取引委員会におけるM&Aの審査にあたり,データの価値なども判断材料に加えることが検討されます。

プロファイリングの問題については,EUでは「プロファイリングされない権利」が認められています(一般データ保護規制(GDPR))が,個人がデータを自由に持ち運べる(利用者が求めればプラットフォーマーがデータの提供・移動に応じる義務を負う)「データポータビリティー」の仕組みが検討されます。

プラットフォーマーによる優越的な地位の濫用を規制するためには,独禁法による対応のみならず,個人情報保護法による対応が必要になろうかと思います。

政府は, 2020年中にもプラットフォーマーに対する規制の導入を目指すようですが,今後の検討状況を注視していきたいと思います。

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