弁護士視点で知財ニュース解説

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「モノ消しゴムそっくり」のガジェットポーチが話題に

cont_img_69.jpg宝島社がトンボ鉛筆の「MONO」ブランドの歴史や消しゴムのデザインの変遷などをまとめた「MONO 文具BOOK」というムック本が8月31日に発売される予定になっているのですが,この本が,現在,話題になっています。

「MONO 文具BOOK」の付属品は,「モノ消しゴムの形をした巨大ポーチ」であり,付属品目当てに一部のネット書店では在庫切れになっているようです。

さて,モノ消しゴムの「MONO」や青,白,黒の三つ色の組み合わせですが,いずれもトンボ鉛筆の登録商標になっています。

商標の世界では,「MONO」の方を文字商標,「青,白,黒の三色の組み合わせ」の方を色彩のみからなる商標と呼ばれ,トンボ鉛筆の許可なく使用することができなくなっているわけです。

色彩のみからなる商標は,2015年に導入された比較的新しい商標で,トンボ鉛筆の色彩のみからなる商標は,セブンイレブンとともに,最初に登録が認められた商標です。

商標は,出所表示機能を備えた一定のものが,商標法に定められた要件に該当しない場合に登録が認められるわけですが,色彩の出所表示機能性は,不正競争防止法の世界では,昭和40年代から裁判所で議論されていました。

不正競争防止法では,他人の周知な出所表示と同一あるいは類似する表示を使用して,需要者を誤認混同させるおそれを生じさせると不正競争行為になるわけですが,この出所表示に色彩が含まれるのかという議論が行われてきたわけです。

戸車の車の部分を橙色に統一して販売していた者が,競業者が同一色の色を使用した戸車を販売した者に対して,不正競争防止法に基づき,販売の差止め,損害賠償を求めた事案で,大阪地裁昭和41年6月29日判決は,複数の色彩を独自に組み合わせたものであれば出所表示として認められる場合があると判断し,単色の色彩の出所表示性を否定しました。

また,複数の種類の家電等に統一色を施していたものの出所表示性が争われた事件で,大阪高裁平成9年3月27日判決では,単一の色彩の独占を認めると,遅れて市場に参入しようとする者が選択する色彩がなくなるとまで言って,単一の色彩の出所表示性を否定しました。

他方,ダイビングスーツに三色のラインを施したものについては,裁判所で出所表示性が肯定されています。

つまり,裁判所では,長らく,色彩が出所表示となることがあることを認めつつも,単色のものは保護の対象とせず,複数の色が組み合わされたものについては保護の対象とするという考え方が採られてきたわけです。

特許庁においても同様の考え方が採用されており,単一の色彩については登録を認めず,複数の色彩が組み合わされたものであれば登録を認めるという取り扱いが行われています。

トンボ鉛筆のモノ消しゴムのデザインは,色彩のみからなる商標として最初に登録が認められたものの一つとして話題になりましたが,兵庫県小野市観光協会が,「mono」と「ono」が似ている点に目をつけて,トンボ鉛筆の許可をとらずに,モノ消しゴムと同様の三色のデザインに「ono」と記載した消しゴムを製造して問題になり,話題になったことがあります。

何かと話題になるモノ消しゴムですが,それは,我々の間に浸透している商品であるということを意味しており,トンボ鉛筆の企業努力のたまものではないかと思います。

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