弁護士視点で知財ニュース解説

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マリカー判決(2)

cont_img_62.jpgサザエさんに関する東京地裁の判決では,多くの人が特定のキャラクターに対して抱く愛玩的イメージが著作権法によって保護されると判示されているわけです。

しかし,大阪高裁昭和60年9月26日判決では,ポパイに内包する愛玩的イメージが著作権法によって保護されるのかについて次のように判示されました。

被告は,キャラクターの複製物も原著作物の複製物として著作権により保護されると主張するところ,右で認定のとおり,キャラクターとは,原著作物中の人物などの名称,姿態,役割を総合した人格とでもいうべきものであって,原著作物を通じ又は原著作物から流出して形成され,原著作物そのものからは独立して歩き出した抽象的概念であって,それ自体は思想,感情を創作的に表現したものとしての著作物性を持ち得ないものといわざるを得ない。

その後,多くの裁判例において,同様の判断が下されるようになり,最高裁でも平成9年7月17日に同様の判断がくだされ,この問題については,事実上終止符が打たれました。

MARIモビリティ開発(旧社名マリカー)が提供していたコスチューム衣装は,多くの方が頭の中で描くマリオやルイジの愛玩的イメージと一致はしています。 しかし,現在の裁判所では,そのことをもって著作権侵害にならないと考えられているわけです。

それでは,マリオやルイジの絵を構成する,帽子,着衣の絵が,全体の絵とは別に著作権によって保護されるのでしょうか。 現在の裁判所の判断基準を前提にすると保護されないと考えるべきであると思います。 「つば」部と比較して大きな「かぶり」部を備えた帽子や,赤色や緑色の長袖シャツにブルーのオーバーオールは,現実にも似たようなものが存在しますし,過去にも絵として表現されたことがありそうなもので,創作性が認められる顕著な特徴を有するものではないと言わざるをえません。

よって,マリオやルイジの絵を構成する,帽子,着衣の絵が,全体の絵とは別に著作権によって保護されることはないと考えておくべきです。

そこで,任天堂としては,併せて不正競争防止法に基づく主張を行うことになるのです。

不正競争防止法では,需要者の間で広く知られた他人の商品や役務の出所を表示するものと同一または類似する出所表示を使用し,需要者の間に混同を生じさせる行為を不正競争行為と定め,表示を使用されている側に使用の差止めや損害賠償を求める権利を与えています。

不正競争防止法で定められた出所表示には,様々なものがあり,商号や屋号,トレードマーク,容器,包装の他に,商品形態,色彩,音,店舗内部の全体的なイメージなど,過去に裁判例で様々なものが出所表示として認められています。

当然,一般論でいえば,店舗などで使用されているユニホームやコスチュームも不正競争防止法の出所表示になりえます。

例えば,他の複数のレストランでも使用されているユニホームやコスチュームと似たものであれば,ユニホームやコスチュームに他の商品や役務と区別する機能を獲得していると評価されず,不正競争防止法上の出所表示にはあたらないことになるのです。

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