弁護士視点で知財ニュース解説

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任天堂 ゲーム動画・静止画の利用に関するガイドライン公表

ゲーム動画は映画の著作物,ゲーム動画の一場面をスクリーンショットした画像は絵画の著作物にあたり,著作権者の許諾がなければ私的な範囲を越えて使用することができません。

任天堂は,任天堂が著作権を有するゲームからキャプチャーした映像や,スクリーンショットした動画・静止画等を使用するにあたってのガイドラインを公表しました。

使用が認められるのは個人です。

対象となるゲームは,発売または配信が開始された任天堂のゲームです。

発売,配信前のゲームは,任天堂が公開した動画・静止画に限られます。

ただし,ゲームの展示会等の公開イベントで撮影した発売前のゲームのプレイ動画は,このガイドラインだけでなく,それぞれの公開イベントで設定されている撮影についてのガイドラインにも従う必要がありますので注意が必要です。

動画は,投稿だけでなくストリーミング配信も含まれます。

cont_img_56.jpg今回のガイドラインの特徴は,営利を目的としない投稿を認めるとともに,特定の投稿先については営利を目的とした投稿が認められているところにあります。

なお,認められているのは,営利を目的とした投稿であって,動画の販売は対象外となります。

現在,任天堂が認める営利を目的としたものであっても投稿を認めているのは以下のものです。なお,投稿先については,随時更新されることになっていますので,投稿時に確認する必要があります。

  • Facebook Game Streamer
  • Facebook Level Up Program
  • ニコニコ動画クリエイター奨励プログラム
  • ニコニコチャンネル
  • OPENREC Creators Program
  • Twitchアフィリエイトプログラム
  • Twitchパートナープログラム
  • Amplify Publisher Program
  • YouTubeパートナープログラム

動画や静止画の使用は,ゲーム実況や,ゲーム紹介等,自身の創作性やコメントが含まれた動画や静止画が投稿されることを前提にしています。

ですから,任天堂が制作したプロモーション動画や,他人の投稿を転載したもの,ゲームのサウンドトラックやムービーシーン,イラスト集等をコピーしたもの等,創作性やコメントが含まれない投稿,単なるコピーに過ぎない態様での使用は認められていません(Nintendo Switchのキャプチャーボタン等の機能を利用する場合は除かれています。)。

また,動画や静止画の使用にあたっては,任天堂や任天堂の関係者から,協賛や提携を受けているようなことを示唆する,誤信させることは認められておらず,その他の違法,不適切,公序良俗に反する投稿も認められていません。

これらは,削除の対象になるとともに,法的措置の対象ともなります。

なお,違法,不適切,公序良俗に反する投稿の例として以下のものが挙げられています。

  • 任天堂の知的財産権を侵害するもの
  • 任天堂の商品またはサービスの正常な動作を妨げたり,安全性を損ねたりする行為
  • 不正にコピーされたゲームソフト,改造されたゲームソフト,任天堂の許諾を受けずに任天堂の著作物を利用して制作されたゲームソフト,または不正に入手されたゲームソフト チート
  • クラッキング,不正アクセス,技術的制限手段の回避,不正な改造またはこれらを可能にする物,ツールもしくはサービス

オフラインのゲーム大会でのプレイ動画の投稿もガイドラインの対象に含まれています。

しかし,このことは,オフラインでのゲーム大会の実施そのものまでもが,ガイドラインの対象となることを意味していません。

ですから,オフラインのゲーム大会の実施が,ゲームの著作物の侵害にあたることがあることに注意しなければなりません。

なお,ゲームの著作物の侵害については,「ゲームバー問題」の記事を参考にしてください。

任天堂では,ゲーム制作を単独で行っていることもあり,ゲーム映像の二次利用の決断を任天堂のみでできますが,複数の企業が協力してゲームが制作される場合が多く,そのようなゲームでは複数の会社の調整が必要となります。

このような事情が影響しているのか,任天堂と同様の動きは他のゲームメーカーから発表されていません。

今回の任天堂の指針では,ゲームのキャラクターの二次創作であるファンアートでの利用については「法令上認められる範囲で」許されるとされており,この方面の利用については解放されているといえるものではありません。

ゲームのキャラクターの二次創作を呼び掛ける動きは,期間が限定されているものの他社で行われたものがあります。

バンダイナムコエンターテインメントは,平成30年6月から10月まで,人気ゲーム「アイドルマスター」のキャラクの公式素材を提供し,メルカリでオリジナルグッズを販売できるキャンペーンを行ったところ,延べ5000点もの商品が出品されました。

二次創作は,著作権者にとっては,ファンや提携企業を呼び込む手段としては非常に有効な手段の一つですし,利用者にとっても,創作や商品流通が活発化し市場を盛り上げる効果が期待できると思います。

ゲーム実況に留まらず,幅広い分野で,ゲームの二次創作が認められるとゲーム業界に留まらず,様々な業界での経済効果が期待できるのではないでしょうか。

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