株式会社gramがティラミスヒーローの商標を登録していたことが原因となりインターネット上で話題になっています。
「ティラミスヒーロー」は,シンガポールで,「アントニオ」という猫のキャラクターがデザインされた瓶入りのティラミスを販売している瓶入りのティラミスを販売している会社の商品や役務を表示です。
シンガポールの会社の説明では,2013年8月に日本でも瓶入りのティラミスの販売を開始し,2014年1月には百貨店各店などでも販売を開始しているようで,現在においても,全国の百貨店で期間を特定して,順次販売を行っている状況です。
また,シンガポールの会社は,日本に支店をもち,通信販売も行っています。
今回,gramが「ティラミスヒーロー」という文字商標や,ティラミスヒーローのロゴにキャラクターをあしらった商標が登録されていた事実が判明して,インターネット上で話題になっているということは,日本においても,シンガポールのティラミスヒーローが,日本人の間でも,「ティラミスヒーロー」がシンガポールの会社が瓶入りティラミスを販売する際の出所表示であると認識されるに至っていることを示しているのだと思います。
ところで,登録された商標であったとしても,他人の周知商標(登録されている必要はありません。)の類似商標や,他人の業務に係る商品や役務と混同を生ずるおそれがある商標については,登録から5年の間は,特許庁に請求することによって無効にすることができます。
また,特許庁の手続で無効とされていなくとも,商標権侵害訴訟の手続で,無効の商標権に基づく請求であることを理由に,商標権の行使を認めないように求めることもできます。
なお,東京地裁の判決には,商標権が無効であることを理由とする権利行使を排除する求めは,登録から5年経過していたとしても可能であるというものがあります。
日本で登録された商標が無効になるか否かは,シンガポールの会社の瓶詰ティラミスが日本においてどのように販売されてきたかによりますが,シンガポールの会社としても特許庁に対する請求を検討されても良いのではないかと考えています。
日本の著名な商品名や地域名がアジア各国で商標登録され,日本の企業のアジア進出の障害となっているニュースを目にすることが,近時頻繁にありましたが,今回の件は,これと全く逆の事例です。
アジアの国々で,日本の著名な商品名や地域名が商標登録され,関係者が苦心している報道を受けて,日本人がその国のことをどのように考えていたかと思うと,シンガポールの方が日本のことを,どのように思うかということは容易に想像することができます。
今回の商標登録問題を受けて,日本の多くの方のコメントを見ていますと,コメント中には,ティラミスの不買呼びかけだけでなく,商標を保有している会社の商品の不買呼びかけを行っているものもあります。
今回のような商標登録は,商売にマイナスに影響することがあっても,決してプラスにはたらくことはないと思います。
登録した商標は放棄することも可能なわけですから,知財保護を世界に訴えている日本の企業として適切な対応をとられることを望むばかりです。