弁護士視点で知財ニュース解説

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京セラ ハンファQセルズジャパンを特許権侵害で提訴

京セラは,平成26年7月10日,ハンファQセルズジャパンに対して,太陽電池モジュール関連の「3本バスバー電極構造」に関する特許侵害を理由に,東京地方裁判所に訴訟を提起したと発表していました。

京セラの特許発明は,結晶Si型太陽電池セルの表面に,3本の太い電極(バスバー)を形成した構造の太陽電池モジュールに関する特許(特許第4953562号)であり,従来技術の2本バスバーに比べて,電気抵抗を低減できる他,太陽光の受光面積を増やしたり,信頼性を向上したりできる技術のようです。

京セラの説明によると,ハンファQセルズジャパンと,1年以上にわたって交渉を続けてきたが,話合いによる解決が見込めないと判断し,訴訟提起に踏み切ったようで,状況次第では,太陽電池モジュールメーカーのみならず,モジュールを取り扱う販売店や発電事業者に対して,損害賠償や差止めを求める特許侵害訴訟の提起を検討するようです。

ハンファQセルズ(Q-Cells AG )は1999年に設立されたドイツの太陽光メーカーで,2001年の太陽電池生産開始から急速に発展した会社でしたが,政府による補助金削減に加え,中国勢との価格競争の激化により経営が悪化し,2012年4月破産の申立てを行い,韓国のハンファグループに買収され現在に至っています。

ハンファQセルズジャパンは,京セラの訴訟提起を受けて,「受領した訴状の内容は,(ハンファグループ企業の)ハンファソーラーワン社が過去に製造していた製品の一部のみを対象としており,ハンファソーラーワン社が現在製造中の製品は対象とされていない。また,ハンファQセルズジャパンはQセルズ社製品を輸入販売しているが,Qセルズ社製品は対象とされていない。なお,本件訴訟においては,差止めの請求はされていない」と説明しています。

また,ハンファQセルズジャパンは,「3本バスパ―電極構造」に関して,「遅くとも1990年代には研究論文等により公表されていた公知の技術であり,京セラの主張は一方的」との見解を発表しています。

ハンファQセルズジャパンの主張を前提としますと,現在,同社が取り扱っている太陽電池モジュールは京セラの特許権を侵害していないようです。
また,京セラの特許権は新規性を欠くため無効であるとも主張しています。

ハンファQセルズジャパンの主張を前提にしますと,同社は訴訟において特許無効の抗弁を主張したうえで,特許庁に対して無効審判の申立てを行う可能性があります。

また,同社は,京セラの販売店や発電事業者に対する働きかけの内容しだいでは,特許が無効であることを前提に,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,流布した」(不正競争防止法2条1項14号)として,京セラに対して,差止め,損害賠償を求める反訴を提起する可能性もあります。

本件については,両社の今後の動向が注目されるところです。

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