登録される特許は新規なもの
特許法は、発明者の技術の結晶を世間に公開する代償として、出願から20年間、その特許を独占することを認めているのです。
公開の代償として独占権を与えるというくらいですから、技術の内容はあたらしいものでなければなりません。
そこで、特許は、未だ社会に公開されていないものでなければなりません。このことを一般的に、「特許の新規性」と表現されています。
特許法は、新規性がない特許がどのようなものであるか規定しています。特許法で規定されている新規性がない特許とは次のようなものです。
- 出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
- 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
- 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
ここで、注意を要するのは、2. の公然実施された発明です。
公然実施された発明とは、公の場で現実に使用された特許のことであり、不特定の人に知られうる状況で使用したことで新規性がないとされます。
仮に、不特定の人に知られてしまった場合には、1. の公然知られた発明となります。
大型の機械装置等は、公の場で試験をしてから特許出願したのでは、2. に引っかかってしまうので注意が必要です。
特定の者が管理する敷地で、関係者からは書面で秘密保持の約束を取り付けておき、さらに周囲から容易には見ることができないようにしておく必要があります。
また、特許法は、日本国内に限定せず、外国において公然知られた発明、実施された発明、刊行物に記載された発明についても新規性がないと定めています。これを世界主義といいます。
先進国では、全てこの世界主義を採用していますので、日本でもどうように世界主義を採用しているのです。
なお、電気通信回線については、国内と外国の区別がありませんが、これはインターネットが全世界とつながっていることとの関係で国内、外国の区別を設ける必要がないことが理由となっています。
新規性の例外
特許が権利として保護されるには、新規性を備えていなければならないと説明しました。
しかし、これには、例外があります。
発明者は、出願前に発明を公にせざるを得ない場合があります。例えば、大規模な装置に関する特許では、出願前に技術的効果を試すための試験を屋外で実施しなければならない場合もあるでしょう。
また、研究者等は、特許をとることより学会において最先で発表することに価値を置いていることも少なくありません。
このように実施試験や学会発表により全ての特許か新規性を有しないとして権利として認めなければ、あまりにも酷なことになってしまいます。
そこで、特許法は、意に反して、あるいは自らの行為で新規性を喪失したとしても6カ月以内に出願すれば新規性を喪失しないとしています。