弁護士視点で知財ニュース解説

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マリカー判決(3)

cont_img_62.jpgそれでは,マリオやルイジの帽子,シャツ,オーバーオールのズボンの色を含めた組み合わせが任天堂という出所を表示する機能を獲得しているかといえば,非常に微妙な判断になるのではないかと思います。

例えば,任天堂が,過去に,他社に対して,マリオやルイジの帽子,シャツ,オーバーオールのズボンの色を含めた組み合わせの使用を禁止し,指摘された会社がこれに応じてきた,裏返せば,任天堂や任天堂から許可された会社のみが,あのコスチュームを使用してきたという実績を示すことができたならば,そのようなコスチュームを使用することができるグループの出所を示すものとして,不正競争防止法上の出所表示として認められる可能性があります。

ただし,任天堂が,この点を裁判所において厳格に主張,立証することができたとしても,裁判所において,マリオやルイジのあのコスチュームが不正競争防止法上の出所表示として認められなかった可能性が非常に高いと考えています。

仮に,マリオやルイジのあのコスチュームが不正競争防止法上の出所表示として認められなかった場合,MARIモビリティ開発が旧社名として使用していた「マリカー」という表示の使用が問題となるはずです。

「マリカー」は,「マリオカート」を略した表現として広く需要者の間で知られています。 また,「マリカー」は,単に,マリオカートというゲームのタイトル(題号)として使用されて,そういうものとして広く知られているだけでなく,任天堂のサービスを表示するものとしても使用されており,需要者においても,そのようなものとしても広く認識されています。

このような「マリカー」という表示を使用することで,マリオやルイジのコスチュームを貸出してカートの運転をさせるという役務の提供が,任天堂による役務の提供と混同させるおそれがあり不正競争防止法に違反すると判断された可能性が高いと思います。

今回の判決に関して任天堂は以下のとおり発表しています。

東京地方裁判所において,「マリカー」という標章等が被告会社の需要者との関係で当社の商品等表示として広く知られていることを認めた上で,被告会社に対して,不正競争行為の差止(例えば,被告会社の営業活動においてマリオ等のキャラクターのコスチュームを貸与することが禁止されることが判決文中で,例示されています。)と,損害賠償金の支払い等を命じる判決が下されました。

仮に,マリオやルイジのあのコスチュームに不正競争防止法の出所表示性が認められたのであれば,そのことを大々的に公表するはずで,「マリカー」という標章(商品やサービスの出所表示)を特定して公表することはないと思います。

MARIモビリティ開発も,裁判所において主張が認められたものの,不服とする点もあるため控訴を行うという趣旨のコメントを発表しています。

MARIモビリティ開発は,「マリカー」という商標を登録しているのですが,任天堂は,この商標登録に対して,特許庁に異議申し立てを行いましたが,特許庁において任天堂の主張は認められませんでした。

MARIモビリティ開発としては,特許庁で商標登録が認めらえている出所表示を使用することが不正競争防止法に違反すると判断されたならば,その判断を不服として控訴することになるでしょうから,MARIモビリティ開発の主張が認められたというコメントを前提にしても,マリオやルイジのあのコスチュームに不正競争防止法の出所表示性が認められていないと推測されるのですが,これは私の邪推でしょうか。

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