弁護士視点で知財ニュース解説

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「ちぃたん☆」 高知県須崎市が著作権侵害で訴訟も検討

cont_img_76.jpg高知県須崎市は,ゆるキャラ「ちぃたん」の活動停止を求め,訴訟も検討する旨の発表を行っています。

もともと,「しんじょう君」という須崎市の「ご当地キャラ」がおり,「しんじょう君」は「ゆるキャラグランプリ2016」』で優勝していました。

「しんじょう君」は,コツメカワウソをモチーフにしたキャラクターで,須崎市の市民をはじめ多くの方から,須崎市をイメージするキャラクターとして定着しているようです。

ところが,この「しんじょう君」と外見が非常に良く似た「ちぃたん☆」が注目を集めています。

「しんじょう君」と「ちぃたん☆」は,デザイナーが同一であるため非常に良く似ているようなのです。

「ちぃたん☆」は,過激なパフォーマンスをネット動画で配信して多くの方の注目を集めいていますが,その動画を見た方から須崎市に対して苦情が寄せられており,今回の騒動に発展しているようです。

キャラクターのデザインを依頼する際,成果物である著作物に対する権利(著作権)が依頼した側に帰属するのか,デザインした側に帰属するのかは,基本的に依頼の際の契約の内容によって決定されます。

依頼者側に最も有利な契約条件としては,著作物をベースに改変する権利を含めて依頼者に譲渡する,依頼者側で改変した場合にも,デザイナーが同一性保持権侵害を主張しないという内容です。

このような契約内容になっていれば,制作されたキャラクターは依頼者側しか使用することができず,改変を加えられてもデザイナー側は何もいうことができないということになります。

契約書で改変する権利について触れられていない場合には,依頼者側は,もとのデザイナーの同一性を損なわない範囲での使用しか認められず,この範囲を超えて使用した場合には,デザイナーから翻案権侵害,同一性保持権侵害を理由とした訴えを受けることになります。

それでは,契約書に著作権の帰属について何らの定めもおかれていない場合には,どうなるのでしょうか。

この場合には,基本的に,著作権の譲渡が行われておらず,デザイナー側に著作権が帰属し,依頼者は,デザイナーが許可した範囲でしかキャラクターを使用することしかできません。

今回の一連の報道を確認してみますと,「しんじょう君」の著作権が,デザイナーから須崎市に譲渡される内容の契約ではなかったのではないかと推測します。

「しんじょう君」が須崎市をイメージするキャラクターとして浸透していることから「しんじょう君」の「著作権は市民の財産」という主張は,感情的に理解できなくはないのですが,法的には認められないことになります。

須崎市と「ちぃたん☆」をプロデュースしている会社とは商標権登録の問題でもトラブルになっているようです。

しかし,「しんじょう君」の著作権が須崎市に帰属していないのであれば,商標権登録に関するトラブルについても,須崎市の歩が悪いのではないでしょうか。

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