弁護士視点で知財ニュース解説

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「ブロッキング」法制化断念 

cont_img_56.jpg政府は,漫画村など,漫画をインターネット上で無料公開している「海賊版サイト」に対する「ブロッキング」の法制化を断念する方針を固めたようです。

今回,法制化を検討していたのは,DNSサーバーがIPアドレスを問い合わせたユーザーに対してダミーのIPアドレスを回答することで,海賊版サイトの閲覧を不可能にする「DNSブロッキング」といわれているものです。

「DNSブロッキング」を行うためには,通信会社において,ユーザーが海賊版サイトや海賊版サイトにアクセスするリーチサイトのIPアドレスを求めているということ把握することになりますが,これが,電気通信事業法で定められた電気通信事業者による「通信の秘密」の侵害にあたることになります。

政府は,昨年4月,「漫画村」など悪質な3サイトを公表し,緊急避難の法理を根拠に,法制化されるまでの間,民間プロバイダーに対して自主的な接続遮断を事実上求め,NTTグループ3社は,接続遮断に踏み切る意思を示していましたが,政府が公表したサイトが閉鎖されたため,プロバイダーによる接続遮断が行われることがありませんでした。

緊急避難の法理とは,急迫な危険・危難を避けるためにやむを得ず他者の権利を侵害した場合であっても法的責任を問われることがないという考え方で,プロバイダーによる接続遮断以外にも著作権を保護する方法があるということで,緊急避難の法理の適用が認められるのかという議論が沸き起こりました。

「DNSブロッキング」については,政府の有識者会議において,その可否について議論されてきたわけですが,電気通信事業者による「通信の秘密」の侵害という根本的な問題を抱えていることもあり,有識者会議での意見をとりまとめることができず,昨年10月,中間とりまとめを公表することを断念したという経緯がありました。

「DNSブロッキング」については,直接的で即効性のある対策として導入が求められる一方で,異なるサイトに移行して同一のコンテンツを提供することが容易であることから,その効果が限定的であるとの意見も主張されていました。

また,「漫画村」の事例では,ウクライナのサーバーからアメリカのサーバーを経由してコミックが配信されていたと言われていますが,このような防弾ホスティングを使用することで発信者情報の特定を困難にした事例においても,発信者を特定し訴訟を提起するに十分な情報を得ることができるという事例が報告されています。

このような事情から,「通信の秘密」という基本的人権を制限してまで「DNSブロッキング」を法制化する立法事実が存在するのかという問題提起が行われ,今回,法制化を断念するという結論に至ったわけです。

今回の「漫画村」に代表される海賊サイトは,違法サイトからのダウンロードが動画や音楽に限定される著作権法を改正して静止画も含め,「漫画村」などの違法サイトから漫画をダウンロードする行為を法律によって規制する,違法サイトに誘導するリーチサイトを著作権法によって規制する,リーチサイトへの広告を自粛させる等,間接的な方法により対応するしかないのではないかと思います。

そもそも,この問題は,マンガ業界の体質によって引き起こされているという側面があることを否定できないと思います。

かつて,音楽や映像の違法ダウンローが世界的に問題となりました。

この問題を受けて,日本の著作権法が改正され,違法にアップロードされた音楽や映像をダウンロード行為が違法行為と定められました。

つまり,利用者一人ひとりが音楽や映像をダウンロードする際に,合法的にアップロードされたものであるか否かを判断しなければならなくなりました。

しかし,音楽や映像の違法ダウンロード問題は,著作権法の改正により沈静化したわけではありません。

違法コンテンツを排除する技術を背景に, インターネット上での音楽や映像の需要に応じて積極的に提供していくこと,違法アップロードサイトを駆逐していきました。

コミックを紙媒体中心に提供するという現在の業態が曲がり角に差し掛かっていると思います。

違法サイトをブロッキングし,コミックを紙媒体中心に提供し続けるということは不可能になったわけですから,コミック業界もインターネットを中心に行われる業態に変化させていく必要があるのではないでしょうか。

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