弁護士視点で知財ニュース解説

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企業の立体商標戦略(1)

cont_img_69.jpg2018年8月8日付日経電子版法務インサイドで,ヤクルトやエルメスの立体商標登録までの努力が紹介され,立体商標の登録が非常に困難であることが紹介されています。

商標は,自らの商品と他人の商品を区別するためのものであり,事業者が提供する商品や役務の出所を示すものとして機能します。

そして,商品や役務が一定の品質を有するものとして市場に受け入れられるようになり,その商品や役務に商標が使用されていますと,当該商標の存在が商品や役務の品質を示すようになります。

商標がこのような品質保証機能を獲得するようになりますと,需要者は,商標の存在を理由に商品や役務を選択するようになり,商標が顧客を吸引する機能(宣伝広告機能)を獲得していくようになります。

商標が一定の品質を保証し,顧客を獲得する機能を獲得するようになると,商標が競業他社に対して優位に立つツールとして重要なものとなってくるのです。

このような商標は,文字,色彩,図形のように二次元で表現されたものだけでなく,立体的形状のように三次元で表現されたものも含まれます。

この立体的形状によって構成された商標が立体商標と呼ばれるもので,日本では平成8年の商標改正により制度が導入されました。

立体商標制度が導入された初期の段階で登録が認められたものの一つとして不二家の「ペコちゃん」やケンタッキー・フライドチキンの「カーネルサンダース」の立体像があります。

ペコちゃん人形やカーネルサンダースは,店先に設置されることで一目瞭然に不二家やケンタッキー・フライドチキンの店舗であることを示しており,まさしく看板として使用されており,本来的に商標として機能するものでした。

問題は,このような本来的に商標として機能するものの立体的形状ではなく,商品そのものの立体的形状が商標として登録することができるのかというところにあります。

商品形態は,その商品が果たすべき機能により決定づけられた基本的形態を前提に,経済的要因,社会的要因,芸術的要因が相まって最終的な形態が決定づけられるものであり,商品の出所を表示するために形態が決定されるということは基本的にありません。

しかし,そのような商品形態であっても,長年市場に受け入れら,多くの方に使用されるという状態が継続する,あるいは,強力な広告を行うなどして,短期間であっても多くの方に使用されるようになると,商品を見ただけで,それを提供する業者を特定することができるようになります。

このとき,商品形態が出所表示機能(商品形態の二次的機能)を獲得したと評価されることになるのですが,そのような商品形態が獲得した出所表示機能に着眼して,商品形態そのものを立体商標として登録することの要望がでてくるわけです。

ところで,不正競争防止法では,他人の周知な商品やサービスの出所を表示するものと同一あるいは類似の出所表示を使用して商品やサービスを提供し,需要者に混同を生じさせる行為が不正競争行為に該当するとして,差止め,損害賠償の対象とされています。

そして,不正競争防止法では,非常に古くから,二次的機能を獲得した商品形態については出所を表示するものに該当するとされており,その他の要件を満たす場合には差止め,損害賠償の対象となり,商品形態が間接的に保護されてきました。

ただし,不正競争防止法の場合は,保護を求める都度,問題となる商品形態に出所表示機能が備わっているか,類似する商品が販売されている営業エリアで周知な商品形態であるか,市場に混同を生じさせているといえるかというチェックを受けます。

そして,請求の都度,問題となる商品が販売されている営業エリアごとに,上記した要件が備わっているかについてチェックされるため,差止めや損害賠償が認められる営業エリアと,これらが認められない営業エリアとが存在する場合があります。これは,一般的に「穴あき現象」といわれています。

また,過去の一時点では差止めや損害賠償が認められていたものが,現在では認められないということもありうるわけです。

ところが,商標登録が行われると日本全国一律に商標として保護されることになりますし,10年ごとに更新の手続を行なえば,商標登録が無効とされない限り,事実上期間の制限を受けることがなく保護されることになります。

このような不正競争防止法と商標との違いにより,商品形態を商標登録するという動機になるわけです。

しかし,商品形態は,その商品が果たすべき機能により決定づけられた基本的形態が前提とされている関係で,商品形態の商標登録を安易に認めると,事実上,特定の商品の販売を特定の事業者が独占するという結果になるおそれがあります。

商標は,特定の商品を複数の事業者が販売する(競業する)ことを前提に,他社との選別化を図るものとして機能することが予定されているのであり,特定の商品の販売を特定の事業者が独占することを許してしまうと,商標に法律が予定する以上の機能を与えてしまうことになっています。

ですから,裁判所や特許庁においては,現在でも,「商品の立体的形状は,本来,その機能を効果的に発揮させる,あるいは優れた美感を看者に与える,との目的で選択されるものであって,商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として選択されるものではなく,これに接する需要者も,そのように理解し,商品の出所を表示するために選択されたものであるとは理解しないのが一般的であるというべきであるから,商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合を除き,基本的に自他商品の識別標識とはならない」と考えられています。

そして,過去の裁判例では,「商品の形状そのものからなる立体商標は,原則として,取引に際し必要適切な表示として特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としない」と判示し,事実上,商品形態の立体商標としての登録を拒否するという考え方を示したものもありました。

ただし,現在においては,市場において長期間にわたり繰り返し販売されることによって識別性を獲得したものについては,商品の機能を果たすために不可欠な形態でない限りにおいて,例外的に登録が認められるという考え方が定着しています。

裁判所において,過去の一時期,出願している立体商標と現実に市場で流通している商品との同一性を厳密に判断し,ラベルの有無や印刷文字等の有無により同一性を否定し,市場において長期間にわたり繰り返し販売されているわけではないとの理由により,登録が認められないという時期もありました。 これにより,登録がみとめられなかったのが「サントリーの角瓶」や「ヤクルトの容器」でした。

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