弁護士視点で知財ニュース解説

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特許庁が営業秘密の金庫番

cont_img_55.jpg特許庁は,暗号化された企業の営業秘密のデータを保管するサービスを無料で提供すると発表しました。

サービスの開始は平成28年を予定しており,サービスがはじまると,特許庁が企業に代わり秘密情報の金庫番になります。

日本企業の情報流出事件やサイバー攻撃による秘密情報の取得が問題なり,不正競争防止法では,営業秘密の流出に対する罰則が年々厳しくなっており,不正アクセスに対する取締まりも厳格化しています。

その流れを受けて,特許庁は,企業情報の「金庫番」サービスの提供を開始するようです。

企業の技術情報は,新規性,進歩性を有するものは特許出願することにより,出願から20年間,特許権として保護されますが,特許出願した技術情報は出願から1年6ヶ月あるいはそれよりも早く権利化されたときにはその時から公開されることになります。

このことから,非常にコアな技術情報については,敢えて特許出願することなく営業秘密として管理されることがあります。

また,顧客名簿等の営業情報は,特許法の保護対象とはならず不正競争防止法の営業秘密に該当する場合のみ保護されることになります。

不正競争防止法の営業秘密は,

  1. 非公知性
  2. 秘密管理性
  3. 有用性

の各要件が備わっている場合にのみ保護されることになります。

そして,訴訟手続においては,秘密管理性が維持されているか否かが争われることが多く,多くの事例で秘密管理性の要件が認められず営業秘密が保護されないということがありました。

特許庁の「金庫番」サービスは,営業秘密を暗号化して管理しているため,企業内において別途杜撰な取り扱いが行われていない限り,不正競争防止法上の「秘密管理性」の要件を認めることができるようになると思います。

また,競業他社が偶然,同一の技術を発明し特許権を取得した場合,先に発明をし,事業の準備を行っている企業には先使用権という権利が認められ特許権侵害になりませんが,先に発明を行って,事業の準備を行っていたとうことを立証することが困難な場合があります。

特許庁の「金庫番」サービスでは登録年月日も明示されますので,遅くとも特許庁に登録したときには発明していたということを容易に示すことができ,先使用権の主張との関係でも非常に有用となります。

このサービスの最大のメリットは,第三者が特許庁のデータベースから営業秘密を取得することが困難で,従業員等による不正流出や外部からの不正アクセスにより営業秘密が流出する可能性を大幅に低減することができる点です。

ただし,企業内においても同一の情報を保有し,管理が杜撰であった場合には企業内からの流出の危険性を払拭することができませんので,この点については注意してください。

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