海賊版サイト「漫画村」の運営者が,フィリピンから出国する際に入国管理局に身柄を拘束されたという報道がされています。
日本は,フィリピン,ドイツ,イスラエルに対して,捜査協力を依頼していたところ,今回のフィリピンでの身柄拘束にいたったようです。
運営者の身柄は日本に送られるようで,今後,共犯者の有無を含めた運営実態の解明が行われるのではないでしょうか。
著作権法では,故意に著作権を侵害した場合の罰則規定があり,10年以下の懲役,1000万円以下の罰金,その両方が科されることになります。
海賊版サイト「はるか夢の址」の事案では,68作品を配信し,3,931万円の被害を与えたとして,運営者の3人に対し,それぞれ3年6ヶ月,懲役3年,懲役2年4ヶ月の実刑判決がくだされています。
「漫画村」は,平成28年1月に開設され,平成30年4月まで運営されており,「はるか夢の址」よりも大儀規模に違法配信が行われており,推計損害額が3,000億円を超えているとも言われています。
捜査の結果,起訴の対象がどの程度の範囲に及ぶかということによりますが,「はるか夢の址」の事案よりも,厳しい刑罰が科されることは予測できます。
また,「はるか夢の址」の事案と同様に,刑事判決確定後に出版社による多額の損害賠償請求が行われることになると思います。
海賊版サイトの問題が取沙汰された当時,「DNSブロッキング」を法制化することの是非が議論され,通信の秘密を侵害することになるとの理由で法制化が断念されました。
「DNSブロッキング」とは,DNSサーバーがIPアドレスを問い合わせたユーザーに対してダミーのIPアドレスを回答することで,海賊版サイトの閲覧を不可能にするというものですが,これを行うためには,ユーザーがIPアドレスの問い合わせを行っているということ把握する必要があり,これが,通信の秘密を侵害することになります。
漫画の海賊版を対策としては,通信の秘密という憲法によって保護されている人権を侵害してまで行うものではなく,今回のような検挙,多額の損害賠償を行うことを積み重ねることによって行う他ないと思います。
また,「漫画村」や「はるか夢の址」などの海賊版サイトが多数出現した背景に,消費者にネット上でコミックを読みたいという要望があるにもかかわらず,出版社がこれに応じてこなかったという出版社側の都合もあります。
海賊版サイトが問題化した以降,出版社による漫画のネット配信が盛んになってきましたが,音楽などと比べると十分であると評価できるものではありません。
漫画のネット配信を本格的に行うためには,出版社などの業界全体のビジネスモデルの再構築が不可欠となり,時間を要することになると思いますが,海賊版サイトの出現を抑止するためにも,出版社による取り組みが非常に重要であると考えています。