サムスン電子は,平成26年8月6日,アップルとの間で,アメリカ以外の地域での特許訴訟を取下げる合意が成立したと発表しました。
アップルとサムスンの世界規模の訴訟合戦は,アップルが平成23年4月にアメリカにおいて,サムスンを被告として特許権侵害訴訟を提起し,サムスンもアップルに対して反訴を提起したことに端を発し,両社は,アメリカ,日本,韓国を含めた10か国で50件以上の訴訟を行っています。
その中で主戦場と言われているのはアメリカですが,そのアメリカでは,平成26年3月に,カリフォルニア州連邦地裁がサムスンに対し約9.3億ドル(約950億円)の賠償を命じる判決を出しました。
サムスンは連邦地裁の判決が不服であるとして控訴しましたが,アメリカにおいては他の訴訟も進行中です。
そのような状況下で,アメリカを除く9か国で繰り広げられている訴訟については,双方取下げを行う合意が成立したわけです。
取下げにあたっての詳細な条件については明らかにされていませんが,サムスンからは「今回の合意に特許使用料を巡る内容は含まれていない」との発表がなされていることから,取下げに伴う金銭のやり取りはないとの憶測も飛び交っています。
アメリカを除く9か国での訴訟は,一方に特に有利な判決を得ることができていないこと,損害賠償の請求額が比較的小さいにもかかわらず訴訟の長期化により費用負担が多額になっていること,サムスンが欧州委員会に対して欧州内では「標準特許」に基づく差止請求を行わない旨の宣言を行っていることが,今回の取下合意が成立した直接的な理由であると言われています。
ただ,業界1位のサムスン,2位のアップルは,中国のファーウェイやレノボ・グループなどの台頭により業界内での地位が脅かされる状況にあり,双方が消耗戦を繰り広げる余裕がなくなってきたのではないかとの憶測も飛び交っているところです。
アップルとサムスンが紛争を継続することで利益を得るのは第三勢力であることは間違いがなく,今回の発表の内容は,双方に大きなメリットがあるものと思われます。