弁護士視点で知財ニュース解説

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スクウェア・エニックス 「ハイスコアガール」の著作権問題で訴訟提起

スクウェア・エニックスは,平成26年10月8日,SNKプレイモアを相手に債務不存在確認請求訴訟を大阪地方裁判所に提起したことを発表しました。

SNKプレイモアは,スクウェア・エニックスが発行している漫画雑誌「月刊ビッグガンガン」で連載中されていた「ハイスコアガール」において,SNKプレイモアのキャラクターを無断で使用する著作権侵害行為を行っているとして刑事告訴を行っており,スクウェア・エニックスは平成26年8月5日に大阪府警による家宅捜索を受けていました。

スクウェア・エニックスは,大阪府警の捜査を受けたことを受けて,SNKプレイモアが管理するキャラクターの著作権侵害が存在しないことの確認を求めて訴訟を提起したわけです。

スクウェア・エニックスは,「当社の主張の正当性を民事訴訟の場において明らかにしていく」と発表しており,大阪府警の捜査にも誠意をもって対応していくとしています。

スクウェア・エニックス側の主張は,おそらく他人の著作物の引用であるため著作権侵害にあたらないというものであろうかと想像しています。

著作権法では,「公表された著作物は,引用して利用することができる。」と規定されており,他人の著作物の引用が認められています。

但し,著作物の引用にあたっては,「公正な慣行に合致するものであり,かつ、報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定されています。

ここで,「公正な慣行」についてですが,現在行われているキャラクターの引用がどのような方法で行われているかが問題となります。

例えば,他人のキャラクターを引用する場合に著作者,著作権者,あるいは著作権管理会社の表示を行うということが一般的であれば,これを行っていない場合には正当な引用とは認められません。

また,「引用の目的上正当な範囲内」については,著作者の創作した部分が主となり,引用部分が限られた範囲に留まっているか,引用したキャラクターの顧客吸引力を殊更に利用していないかなどが問題になります。

そもそも,著作権法によってキャラクターを保護したいと考える経済的な動機は,キャラクターが有する顧客吸引力を使用し,顧客を奪われた状態にあるからです。

引用に該当するか否かの判断においても,使用したキャラクターがもっている顧客吸引力を利用して「ハイスコアガール」が連載されている雑誌の販売を行っていたか,あるいは単行本を販売していたかということが問題になります。

警察や検察庁において,著作権法で認められる引用にあたるか否かを判断することは困難,あるいは不確定でしょうから,本件訴訟における裁判所の判断が刑事処分与える影響は大きいと思います。

なお,このような著作権を侵害しないことの確認を求める訴訟を提起された場合,一般的には,著作権侵害による差止,損害賠償を求める反訴の提起が行われ,反訴が提起された場合には,債務不存在確認の訴えは,訴えの利益が喪失しますので通常取り下げられ,通常の著作権侵害訴訟となります。

いずれにしても,本件訴訟については注目したいと考えています。

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