弁護士視点で知財ニュース解説

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営業秘密  「マル秘」表示で保護

経済産業省は,平成26年10月31日までに,不正競争防止法2条1項4号から9号によって保護される営業秘密について,要件を緩和する指針を公表すると発表しました。

不正競争防止法が保護する情報は,生産方法,販売方法などの事業活動に有用な技術情報と顧客名簿などの営業情報があります。

そして,これらの情報の全てが不正競争防止法により保護されるわけではなく,

  • 事業に有用な情報であること
  • 秘密として管理されていること
  • 公然と知られていないこと

の3つの要件が備わっている情報に限定されます。

企業が保有する情報において,その企業に有用でない情報は少なく,その企業にとって有用な情報でないのであれば,そもそも問題になることがありません。

問題となるは,「秘密として管理」されており,当該情報が「公然と知られていない」という点です。

そして,「秘密として管理」されているか否かという点が問題となり,裁判においても,秘密管理性の要件が認められないために不正競争防止法の適用がないと判断される例が少なくありません。

コンピュータを操作する者が限定されておらず,パスワードでアクセス制限が掛けられているわけでもない情報や,机上に置かれたり,鍵を掛けていないキャビネットに保管されており,社内のだれもが自由に使用できるファイルや袋に入れられている情報であって秘密の表示のないものは秘密管理性がない(東京地判平11・5・31「化学工業薬品事件」)とされたり,

人工歯の原型について保管場所が各担当者の任意に委ねられ,部外秘の表示もなく,外部の専門家に預ける際にも秘密保持契約が締結されていない場合には,少なくとも内部の従業員に対する関係では客観的に認識しうる秘密管理がなされてない(京都地判平13・11・1「人工歯事件」)とされ,

顧客名簿に秘密とする表示がなく,そのプリントアウトが本立てに置かれており社員が自由に見ることができた場合には秘密管理性がない(東京地判平10・11・30「スコア―カットナイフホルダー事件」)とされ,

同種の書類中の一部のみに「マル秘」の押印があるにとどまるうえ,同内容の情報がパソコンに保存されておりパスワードが設定されていない場合も,他の社内向け文書と大差ない状態で管理されており秘密管理の要件を充たさない(東京地判平12・12・7「車両変動状況表事件」)
と判断されており,裁判所においては,客観的に管理状態が確立されていないと秘密管理性を認めないと判断される例が少なくありません。

今回の指針では,ファイルなどの表紙に「マル秘」などと目立たせておけば営業秘密とみなすという内容になるようです。

また,今回の指針では,下請業者の保護も盛り込まれる予定になり,下請業者が大企業などに試作品を提供した場合に,秘密情報であることを口頭により確認しておくことで秘密管理性を認める内容になるようです。

秘密管理性の要件は,訴訟においてネックになる部分ですので,経産省の指針を受けて裁判所においても秘密管理性の要件が緩和されることを期待します。
   

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