弁護士視点で知財ニュース解説

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ベネッセ事件被告 無罪主張

ベネッセコーポレーションの顧客情報流出事件で,不正競争防止法違反の罪に問われた被告人が無罪主張を行ったとの報道がなされています。

不正の手段により営業秘密を取得する行為,不正取得行為により取得した営業秘密を使用し,若しくは開示する行為は,不正競争防止法により差止請求,損害賠償請求の対象となります。

さらに,不正の利益を得る目的で,保有者の管理を害する行為により営業秘密を取得する,管理侵害行為により取得した営業秘密を,不正の利益を得る目的で使用,開示する行為については,不正競争防止法により,10年以下の懲役,1000万円以下の罰金(両方の刑が科される場合があります。)と定められています。

被告が無罪を主張する理由は,上記した行為を行っていないということではなく,そもそも被告が取得し,開示した情報が不正競争防止法が定める営業秘密ではないという理由で無罪の主張を行っています。

報道によると,問題となる顧客情報は,「勤務する160人は各自のパソコンから顧客データにアクセスできた」という主張を行っており,不正競争が定める秘密管理性の要件について争っているものと判断できます。

詳細な事情は把握できませんが,ベネッセのような大きな企業では顧客情報に接する従業員や関係者の数は多いと思われますが,全ての従業員や関係者との比率でいうとすくないのではないかと推測しています。
また,顧客情報に接触するためには,端末が限定されているでしょうし,その端末に触れることができる従業員が限定されていると推測されますので,被告人の主張は厳しいのではないかと考えています。

不正競争防止法の秘密管理性の要件については,裁判所において厳格に解釈される傾向があるため,営業秘密に関する不正競争行為の認定が限定されることになり,営業秘密の保護としては不十分ではないかとの意見が存在し,経産省においても秘密管理性の要件に関する指針が示されるとの報道が行われたばかりです。

本件は,秘密管理性の要件をどのようなものとすべきかについて検討するよい機会なのではないでしょうか。

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