弁護士視点で知財ニュース解説

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「ゆるキャラ」巡るトラブル続発

平成26年12月22日付日経新聞で,ご当地キャラクターとして生まれた「ゆるキャラ」を巡るトラブルが紹介されています。

記事で紹介された事例として大阪府の統一キャラとなった「モッピー」の名称は,ユニバーサルスタジオジャパンが同一名称の商標登録を行っていたことが理由となり「もずやん」という名称に変更されるということがありました。

また,「メロン熊」という名称を使用していた北海道夕張市の物産店が,「melonkuma」という商標を有していた会社から商標権侵害を理由に1000万円の支払いを求める訴訟を提起されるという事件も発生しています。なお,本件では,特許庁において3年以上商標を使用していなかったことで,不使用取消審判の申立てが行われ,取消しの審決を受けていたこともあり,商標権者による商標権の行使が権利濫用であるとして請求が認められることはありませんでした。

滋賀県彦根市のご当地キャラである「ひこにゃん」も,当初予定されていなかった「ひこにゃん」のグッズが販売されたことで,著作者の同一性保持権を侵害したとの理由でトラブルになりました。なお,彦根市は,著作者から「ひこにゃん」の著作権を譲り受けていましたが,著作者人格権は著作権譲渡の対象とはならない関係で,著作権譲渡を受ける際に著作者人格権の不行使の合意を行っていなかったために発生したトラブルと言ってよいと思います。

ご当地キャラ命名後に同一名称,あるいは類似する名称の登録商標が存在することが判明するというトラブルは,命名にあたり簡易な商標調査すら行っていなかったことが原因です。

また,「ひこにゃん」の事例は,当時契約交渉を行った担当者が著作者人格権に関する知識がなかったために発生したトラブルと言えます。

これらの事例の他にも,地元に多く生息する動物を擬人化したキャラクターを制作したところ,他の地域で類似のキャラクターが使用されていたという問題が発生する場合があります。

著作権の一つである複製権は,偶然同一あるいは類似する著作物を制作しただけでは侵害とはならず,問題となる著作物に依拠して制作した場合に問題になります。

ですから,偶然類似したというだけでは法的に問題ありませんが,問題となるキャラクターがある程度有名な場合には,依拠して制作したと判断される可能性があります。

裁判所では,カエルを擬人化した絵について,顔,目玉,胴体,手足によって構成されること,顔の輪郭を横長の楕円形という形状にすること,胴体を短くして短い手足をつけること,目玉が丸く顔の輪郭から飛び出していることはありふれた表現であるため,これらの点に創作性を認めることができず,これらの点が共通することをもってキャラクターの利用が認められなくなることはないと判示された例があります。

ペンギンをモチーフとしたキャラクターについても上記した裁判例と同様な判断が下されたことがあります。

ですから,キャラクターが類似するということだけで著作権侵害となるということはありませんが,トラブルに発展する可能性が十分にあります。

そして,トラブルになった以上,法的には問題がなくてもキャラクターそのものを変更しなければならなくなり,多額の損害や費用が発生するということも十分に考えられるところです。

ご当地キャラクターの名称,容姿を決定する際には,知的財産権との関係でも十分な配慮が必要になりますので注意してください。

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