弁護士視点で知財ニュース解説

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営業秘密の侵害 立証責任の転換

経済産業省は,企業の営業秘密の不正取得に関する民事訴訟において,被告に不正取得でないことの主張立証責任を負わせる方向で不正競争防止法の改正を行うことを検討しています。

現在の不正競争防止法では,営業秘密を漏洩された企業が不正取得の事実を主張,立証しなければなりません。

そして,現在においても,不正競争防止法には,「不正競争によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあると主張する者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは,相手方は,自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。」(6条)という規定が存在します。

今回,経済産業省が検討している法改正は,上記の規定を,さらに進めて,被告が保有している営業情報を自ら獲得した,正当に取得した者から正当に取得した等の主張,立証を行うなどして,営業秘密を不正に取得していないことを主張,立証する必要があります。

不正競争防止法が定める営業秘密に関する不正競争行為は,もともと営業秘密を保有している者から不正に取得した類型と,当初は合法的に開示されたものであるが,その後に過程で不正に取得された類型に分類することができますが,いずれの不正競争行為についても「不正に取得されたもの」という立証を原告が行わなければならず,この立証が非常に大変で,ときには訴訟提起を断念せざるを得ないということも少なくありませんでした。

今回の改正では,原告の立証責任を大幅に軽くするものであり,営業秘密に関する訴訟提起が容易になります。

経済産業省は,営業秘密の不正取得に関する刑事罰の対象拡大,刑事罰の重罰化を行うことによって営業秘密の保護を図ってきましたが,民事の側面からも保護のあと押しを行ってくれることになりそうです。

営業秘密を管理している企業やそれに関与する弁護士にとっては,朗報ではないでしょうか。

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