弁護士視点で知財ニュース解説

被告の証拠不提出に罰則規定

知的財産の保護は,安倍政権が掲げる「三本の矢」の一つである「日本再興戦略」においても「我が国の産業競争力の強化に当たっての重要な取組の一つとして位置付けられている。」ところです。

政府は,職務発明に関する特許法の改正に続き,特許権侵害訴訟における立証の容易化,損害額算定規定の見直しの検討に着手しました。

特許法においては,「裁判所は,特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては,当事者の申立てにより,当事者に対し,当該侵害行為について立証するため,又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる」(特許法105条1項)と規定されており,「その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるとき」(同項但書)を除き,証拠の提出が義務化されています。

しかし,上記した特許法の規定に基づき裁判所から提出を命じられているにもかかわらず,証拠を提出しないという当事者がいます。

この場合,裁判所は,侵害判断については証拠を提出しない者に不利な判断,損害額については特許法105条の3により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき相当な損害額を算定するにあたり証拠を提出しない者に不利な判断を行う傾向があると感じています。

ただし,侵害判断においては,特許権侵害であることを確認することができる証拠がない以上,訴訟においては原告が敗訴することになりますし,それを狙って証拠の提出が行われないという戦術を取られる場合がありえます。

そこで,今回検討されている改正内容は,裁判所から提出を命じされているにもかかわらず提出に応じない場合に刑事罰を科すというものです。

また,現在特許法では,損害賠償額の推定規定が設けられており,侵害された者の利益に侵害物件の個数を乗じた金額,侵害者が得た利益,ライセンス相当料のいずれかを損害額と推定すると規定されていますが,これらの計算方法により算出される損害額がアメリカや欧州で認められる損害額と比較して著しく低いと言われています。

政府は,この損害額推定規定についても見直す方向で検討を行っています。

アメリカにおいては,いわゆる3倍賠償という制度が存在し,故意や悪質な侵害事例においては,特許権侵害により被った損害の3倍を上限として賠償額を加算することが認められています。

このような規定が存在することも関係してアメリカの特許権侵害訴訟における損害賠償金額は非常に高額になる傾向があります。

この制度は懲罰的賠償制度と呼ばれ,特許権者の救済だけでなく特許権侵害を抑止する効果を有するものとして採用されています。

日本においては,実損主義という考え方が根底にあるため懲罰的賠償制度が導入されるということはないでしょうが,権利救済に資する新たな損害額の推定規定が設けられることが期待されています。

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