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サントリー対アサヒ ノンアル訴訟

cont_img_39.jpgサントリーとアサヒによる「ノンアルコールビール」に関する特許訴訟の判決が,平成27年10月29日に東京地裁で下されました。

サントリーとアサヒは,ノンアルコールビールの分野で市場においても鎬を削っており,平成26年においては,サントリーオールフリーが720万ケースで市場の44%を占め,アサヒドライゼロが630万ケースでサントリーを負う状況になっています。

サントリーは,ノンアルコールビールに関して特許を取得しており,特許権の内容は,次のとおりです。

「エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるビールテイスト飲料であって,pHが3.0以上4.5以下であり,糖質の含量が0.5g/100ml以下である」ことを特徴とする22の特許請求項からなる特許権(特許第5382754号)

サントリーは,アサヒのドライゼロが上記した特許権の特許請求の範囲に含まれると主張して訴訟を提起しました。

サントリーとアサヒは,平成25年10月からドライゼロを巡り交渉を行っていました。なお,当初は,上記特許権は特許査定されておらず,特許権を取得する見込みであるという前提で交渉が行われていました。

アサヒは,当初から,サントリーの特許について特許権が無効となる理由が存在するという主張を行っており,今回の訴訟においても特許無効の主張を行っていました。

特許庁で特許権が付与された特許発明に対して無効であるという主張が行われることについて違和感を抱く方も少なくないと思います。

特許庁において特許権を付与してもらうためには法律に定められた要件をクリアーする必要があり,これらの要件をクリアーした発明でなければ特許権が付与されることがありません。

特許庁の審査官は,出願された発明につき,法律に定められた要件をクリアーしているか否かを審査するわけですが,審査官がチェックする要件で非常に重要なものに,既に存在する技術と同一,あるいは既に存在する技術を前提に容易に発明することができるか否かという点があります。

出願される発明と既に存在する発明とを比較して,出願された発明に新しい要素があるか,新しい要素があるとして,その分野に属する人であれば簡単に発明することができるかというチェックをするわけですが,審査官が確認する既存の発明は,世の中に存在する全ての発明を確認するのではなく,特許庁が把握している発明に限定されます。
また,特に容易に発明することができるか否かの判断には,微妙な部分が存在するため評価が分かれることもあります。
これらの理由で,本来であれば特許権を付与してはいけない発明に特許権を付与してしまうということが発生するのです。

さらに,特許法では,審査官が,法律に定められた特許登録を拒否する理由を発見することができない場合には特許登録を認めなければならないと規定されています。つまり,客観的には特許権を付与してはいけない発明であっても,審査官がこれを発見できない場合には特許権が付与されることになるわけです。
このように,法律のたてつけそのものが,客観的には特許登録してはいけない発明を登録させることを予定しており,この点においても,本来であれば特許権を付与してはいけない発明に特許権を付与してしまうという事態が発生する原因があります。

ところで,誤って登録された特許権を無効にするためには,特許庁に対して審判の申立てを行なう必要があります。

なお,特許庁の審判に不服がある場合には,知的財産高等裁判所に訴訟を提起し,さらに最高裁においても争うことができます。

特許庁において審判の申立てを行ない,特許権が無効であることが確定しない限り,誤って登録された特許権であったとしても,法律上は有効な特許権として存在するということになります。
しかし,特許庁において無効であると判断されると推認できる特許権により,権利が行使されると権利を行使された側にとってはたまったものではありません。

そこで,法律では,特許権侵害訴訟において,審判の申立てが行われれば特許庁において無効であると判断されるであろうと裁判所が考えるときには,特許権の行使が認められないと定められています。

今回,アサヒが裁判所において主張していたのは,この法律に基づく主張であり,裁判所においてアサヒの主張が受け入れられたということになるのです。

サントリーは,知財高裁に対して控訴を行うことを表明しています。ントリー側の主張が受け入れられる可能性は低いのではないかというのが,私の個人的な意見です。

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