経済産業省は,平成27年10月1日,イメージマッチング技術を利用した「画像意匠公報検索支援ツール(Graphic Image Park)」のサービス提供を開始しました。
「Graphic Image Park」は,画像イメージマッチング技術を用いて,ユーザーが指定した形や色の要素と,公開されている日本の登録意匠の図面とを比較し,近い順に並べ替えてサムネイルで一覧表示してくれます。
また,「かたち重視」,「色重視」といった表示順の指定ができるという特徴がある上に,サムネイルイメージから意匠公報のPDFファイルを呼び出すことも可能となっています。
「Graphic Image Park」の最大の特徴は,「日本意匠分類」や「意匠に係る物品」を指定することなくWebサイト上で比較したい画像を入力するだけで意匠公報に掲載された画像が表示されるため,意匠に関する専門的な知識がなくても検索を行うことができるという特徴があります。
これにより,弁理士さんに依頼していた意匠調査を,ある程度ご自身でもできるようになると言ってもよいのかもしれません。
注意しなければならないことは,「Graphic Image Park」が登録意匠の意匠権が及ぶ範囲を判断してくれるわけではないということです。
意匠権は,同一あるいは類似の物品に対して,同一あるいは類似の意匠に対して権利が及びます。
そして,物品の類否判断は,比較する物品の用途と機能により比較します。
また,意匠の類否判断は,当該意匠にかかる物品の需要者を基準に,比較する二つの意匠の基本的構成態様,各基本的構成態様を構成する具体的構成態様に分説し,両者の一致点,相違点を割り出します。
さらに,公知意匠,関連意匠などを参照した上で登録意匠の「意匠の要部」を認定し,一致点,相違点が「意匠の要部」に存在するのか,それ以外の部分に存在するのかよって判断に影響を及ぼします。
意匠の類否判断は,単なる形態の比較ではなく「意匠の要部」を前提とした一定のバイアスをかけて評価する点に難しさあります。
また,特許発明とは異なり定量性がないため,最終的には裁判所や特許庁の主観的判断が入り込むところに類否判断の予測困難性があります。
詳細については,著書「プロダクトデザイン保護法」で解説していますので,そちらも参照してください。
「Graphic Image Park」は,非常に便利な検索支援ツールではありますが,意匠の類否判断に関して法的な判断を行ってくれるものではないという理解を前提に利用するようにしてください。