知的財産
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商標権

商標権とは

商標とは何かを検討する前提として、商標が現実にどのような機能を有するものとして使用されているかを概観します。 まず、商標には、自己の商品、役務と他人の商品、役務とを区別する自他識別能力があります。

商標の本質的機能はこの自他識別能力にあります。商標法3条1項各号では、自他識別能力のない標章に商標登録を認めない旨規定されており、商標法は自他識別能力が商標の本質的登録要件であることを宣言しているといえます。
自他識別能力は、他面で、同一の商標を付した商品又は役務は、常に同一の出所から流出したものであることを示す出所表示機能を有するようになります。

また、同一の商標を付した商品又は役務は、同一の品質、質を有することを示す品質・質保障機能を有するようにもなります。さらに、商標そのものがブランド化して商標を付した商品又は役務の宣伝広告の効果を高める広告的機能を有するようにもなります。
すなわち、商標は、自他識別機能を有することにより、当該商標に業務上の信用が化体されていき、出所表示機能、品質・質保証機能、さらには広告的機能を獲得するものとして機能するものなのです。

商標とは

商標法によって保護される商標とは何かについて検討します。
商標とは、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であって、業として商品を生産等又は役務を提供等するものがその商品又は役務について使用するもの」と規定されています。
つまり、商標は、標章であって、業として商品を生産等又は役務を提供等するものが、その商品又は役務について使用するものということになります。

商標とは、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」であると説明しましたが、この「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」のことを、商標法上では標章といいます。
標章は、立体的形状も含まれますので、平面的であると立体的であるとを問いません。

海外では早くから立体商標制度が取り入れられていましたが、日本では、平成8年度改正により導入されました。この立体商標制度の導入に伴い、標章の構成要素として「立体的形状」が追加され、立体的形状及び立体的形状と平面標章との結合により構成されるものが標章に含まれることになったのです。

ちなみに、商標法では、立体商標とは、立体的形状(立体的形状と文字、図形等との結合を含む)からなる商標をいうと規定されています。
標章は、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されますので、視覚を通じて認識されるものに限られます。
聴覚・嗅覚・触覚・味覚といった視覚以外の五感を通じて認識されるものは標章ではありません。

商標制度の制度設計としては、特定の業者のテーマソングや、香水を製造する者の香り、特定の飲食店の味などを商標として認めることも考えられなくはありません。
しかし、これらは商標としての特定性が弱いなどを理由として、日本では採用されていません。あくまで商標法によって保護されるものは視覚を通じて認識されるものに限定されるのです。

また、標章の定義から、標章は静的なものに限定されます。
動くものを保護する意匠とこの点で異なります。

指定商品・役務

商標は、業として商品を生産等又は役務を提供等する者によって使用されるものでなければなりません。標章を商品について使用すれば商品商標となり、標章を役務について使用したとき役務商標となります。なお、商品・役務の種類は、商標法施行規則6条の別表に列挙されています。

ここで商品とは以下の各要件を備えるものをいいます。

  • 取引の対象となること
  • 流通過程にのること
  • ある程度量産可能であること
  • 有体動産であること

商標の本質的機能は自他識別機能にあり、その派生的機能として出所表示機能、品質・質表示機能等が存在します。 商標がこれらの機能を有するものとして使用されるには、商標が付される商品は、取引の対象となり、流通過程にのることを予定していなければなりません。

また、商標の出所表示機能や品質・質表示機能は、商標を付する商品がある程度流通することを予定しています。ですから、商標を付する商品についてはある程度量産可能であることが必要なのです。

さらに、役務商標との区別から、対象となる商品は原則として有体動産であることが必要です。なお、無体物であっても、プログラムや電子出版物は、商取引の対象となるので、商品として扱われています。

役務

役務とは、他人のために行う労務又は便益であって独立して取引の対象となるものをいいます。 よく取り上げられている例としては、金融、建設、通信、運送業等があります。

この役務については、商標の機能との関係から、必ずしも営利目的が必要とされるわけではありません。
商標は、商品又は役務について使用するものと定義されていますが、この「商品又は役務について使用する」とはいかなるものを指すのでしょうか。

商標法では、標章の「使用」について定義した規定が存在し、以下のように規定されています。

  1. 商品又は商品の包装に標章を付する行為
  2. 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
  3. 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
  4. 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
  5. 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為,/li>
  6. 役務の提供にあたりその提供を受ける者の当該役務の提供にかかる物に標章を付する行為
  7. 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。次号に同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
  8. 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に付して電磁的方法により提供する行為

1. 及び2. は商品について、3. ないし7. は役務について、8. は商品及び役務の両方についての使用です。

また、商品その他の物に標章を付することには、商品若しくは商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告を標章の形状とすることが含まれるものとされていますので、「標章を付する」には、商品などの形状自体を1項の立体的形状とすることが含まれることになります。

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