知的財産が生まれるまでに多くのお金、労力、時間が費やされています。また、知的財産は、競争力の源泉です。他社との区別化を図る上で必要不可欠な財産です。知的財産のフリーライドを見過ごすということは、日々会社の利益が吸取れていくことを意味します。そして。長期間放置することは、企業が競争力を失っていくことを意味します。
直ちに警告を行うべき?
安易に侵害警告を行った場合、警告を受けた会社から他の知的財産権侵害を理由に警告を受ける。あるいは訴訟を提起されるリスクがあります。また、安易に侵害訴訟を提起したものの敗訴し費用と時間を浪費するということにもなりかねません。
敗訴による費用と時間の浪費だけであればよいですが、
- 警告を受けた会社から提起された訴訟にも敗訴して多額の損害賠償を行う
- 事業の廃止に追い込まれる
という事態に陥る可能性もあります。
知的財産訴訟の現状
知的財産権侵害訴訟の勝訴率は必ずしも高くありません。近時の特許権侵害訴訟の例で説明しますと8割近くの事件が敗訴になっています。
特許・実用新案意匠、商標などの場合ですと訴訟において権利無効の主張を行われることが多く、近時の特許権侵害訴訟では訴訟事件の8割の事件において、被告から権利無効の主張が行われています。
そして、権利無効の主張が行われた事件の半数で権利が無効であると判断されています。
敗訴判決の4割弱は、権利が無効であることが理由となっています。
警告に先立って検討すべきこと
権利侵害されていると判断された場合には、安易に警告書を送りつけるのではなく、まず、本当に知的財産権が侵害されているか慎重に検討する必要があります。
また、逆に知的財産権を侵害しているという反論を受ける可能性がないかについても検討しなければなりません。さらに、訴訟を行ったことにより、裁判所において権利無効の判断が下される可能性がないかについても慎重に判断する必要があります。