知的財産
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他人の商品等表示

周知表示混同惹起行為

不正競争防止法は、周知な他人の商品等表示と同一・類似の商品等表示等を使用して他人の商品・営業と混同を生じさせる行為を不正競争行為としています。
このような行為を、一般的には周知表示混同惹起行為といいます。

不正競争防止法は、「商品等表示」を「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」と定義しています。

つまり、不正競争防止法は、商標法で保護される商標以外にも、他人の商品等表示を使用して、他人の商品・営業と混同を生じさせる行為を不正競争行為として規制しているのです。

なお、商品等表示といえるためには、商標と同様に識別力を有するものではなければなりません。

不正競争防止法における「標章」は、商標法上の商標、標章のこというと規定されています。ですから、周知表示混同惹起行為における商品等表示は、登録商標、登録されるに至っていない標章も広く含まれることになります。

ここで、「人の業務に係る」の「人」には、自然人のみならず、法人、権利能力なき社団や企業グループも含まれることになります。

裁判例で認められたものに、系列会社のグループのみならず、フランチャイズ契約で結合されたグループ体、ライセンス契約で結合されたグループ体等があります。

最高裁昭和58年10月7日「日本ウーマン・パワー事件」判決は、親会社の商品等表示を使用する子会社との関係で当該子会社を「人」に含まれると判示しています。

また、最高裁判所昭和59年5月29日「NFLヘルメットマーク事件」判決は、以下のとおり判示しています。

商品化事業部が各業界から一社を選択して複数の企業に対してNFLのヘルメットマークの使用を許諾していたという事案において「不正競争防止法1条1項1号又は2号所定の他人には、特定の表示に関する商品化契約によって結束した同表示の使用許諾者、使用権者及び再使用権者のグループのように、同表示の持つ出所識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価することのできるようなグループも含まれるものと解するのが相当である。

このように判例や裁判例では、周知表示混同惹起行為によって保護される主体は広範に解釈されています。

著名表示冒用行為

周知表示混同惹起行為では、他人の商品・役務と同一あるいは類似しなくとも「誤認のおそれ」が生じる必要があります。ところが、他人の商品・役務とあまりにもかけ離れたものであるため、同一あるいは類似の商品等表示を使用した場合にも需用者の間で誤認・混同が生じない場合があります。

かかる場合に商品等表示の使用を放置すれば、その商品等表示の識別力が希釈化(ダイリュージョン)されることになります。また、高い顧客吸引力を有する商品等表示について、何らの営業努力を行うことなく無償で使用すること(フリーライド)を認めざるを得なくなります。
さらに、使用のされた方次第で、努力の結果獲得した高い顧客吸引力を有する商品等表示が汚されること(ポリューション)にもなります。

不正競争防止法において著名表示冒用行為が規定される以前は、ポリューションが生じているような場合には、周知表示混同惹起行為の「混同のおそれ」の要件を緩和して適用するという対応がとられてきました。

例えば、東京地裁昭和59年1月18日「ポルノディズニーランド事件」判決においては、かなり強引な認定で「混同のおそれ」ありと判示されています。

このような解釈によるダイリューション・フリーライド・ポリューションに対する対応には限界があり、本来の適用場面においても「混同のおそれ」という要件が死文化するという弊害も予想されるところでした。

そこで、不正競争防止法は、高い顧客吸引力を有するに至った商品等表示、あるいはこれに類似するものの使用については、「混同のおそれ」がなくとも不正競争行為にあたると規定しました。

高い顧客吸引力を有する商品等表は、不正競争防止法においては、著名な商品等表示と表現されており、商品等表示のうち特に名声が高く、本来の商品営業範囲を超えて、自己を表示するものとして広く知られ、かつ一定以上の信用・名声・評判が確立され、かつ一定以上の信用・名声・評判が確立された商品等表示のことをいいます。

つまり、周知表示混同惹起行為の周知表示より、大きな顧客吸引力が化体されている上に、広い地域で需用者等に認識されている必要があります。

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