いかなる著作物の如何なる権利が侵害されているのかを検討
著作権は、権利の束と表現されるように異なる内容の権利が複数存在します。
また、著作物は多種多様であり、著作物の種類によって、認められている権利の内容がことなります。
したがって、著作権侵害か否かの判断を行うにあたっては、いかなる著作物の如何なる権利を侵害しているのか特定する必要があります。
さらに、著作権侵害の紛争が生じた場合には、そもそも対象物が著作物であるのか否かが問題になります。
よって、そもそも対象物が著作物であるか否かを検討しておく必要があります。
そもそも、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定しています。
思想又は感情
著作物は、思想又は感情を表現したものでなければなりません。
つまり、著作物は、人の精神的活動の成果を客観的に表現したものであると言えるのです。ですから、単なる事実の羅列にすぎないものやゲーム等のルールそのものは著作物ではないのです。
ただし、単なる事実を題材に文章として表現したり、事実の集積結果を統計資料等としてまとめて特定の目的に沿うように表現されたものは、選択あるいは配列・構成に創作性が認められれば、著作物となりますので注意が必要です。
表現したもの
著作物は、表現したものでなければならず、「思想又は感情」それ自体は保護の対象とはなりません。ただし、「表現したもの」であれば、媒体に固定されている必要まではありません。
よく取り上げられる例として、「即興音楽」がありますが、これは媒体には固定されていないものの、表現したものにかわりなく著作物となるのです。
創作性
そして、著作物は、「創作的」に表現されたものでなければなりません。
ここでいう「創作的」とは、表現の内容について独創性や発明のような新規性があることを必要とするものではありません。
思想又は感情を表現する具体的形式に作成者の個性が表れていれよいとされています。
文芸、学術、美術又は音楽の範囲
さらに、著作物は、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に含まれている必要がありますが、それぞれどの分野に属するかについて拘泥する必要はありません。
文芸、学術、美術又は音楽の範囲とは、一般的に、知的・文化的精神活動の所産全般を指すものであるという程度に解されています。
ですから、著作物か否かが問題となった場合に、それが文芸、学術、美術又は音楽のいずれの範囲に含まれるのかについては、神経を尖らせる必要はありません。
著作物の例示
著作権法は、著作物について定義するとともに、著作物の種類について例示列挙しています。
著作権法が例示する著作物には以下のものがあります。
- 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
- 音楽の著作物
- 舞踊又は無言劇の著作物
- 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
- 建築の著作物
- 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
- 映画の著作物
- 写真の著作物
- プログラムの著作物
ただし、これらはあくまで例示列挙であって、この中に含まれないものであっても、著作権法上の著作物と評価される限り著作権法によって保護されますので注意してください。
その他にも著作権法は以下のものを著作物としています。
- 二次的著作物
- 編集著作物
- データベースの著作物