知的財産
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映画の著作物

コンピュータゲームは映画の著作物といえるのか

映画の著作物は、音を伴い又は伴わないで、連続する影像に表現されたものをいいます。

著作権法上の映画の著作物は、

  • 映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され
  • 物に固定されているもので
  • 著作物であるものを含むとされています。

著作物であることが前提となっているため創作性が求められることになります。
よって、監視カメラ等で機械的に撮影したものやニュースソースとして機械的に撮影したものは映画の著作物に含まれません。また、媒体に固定されているということが求められています。

この「固定要件」については、2条3項が「映画の著作物」に「含まれるもの」という規定の仕方になっているため不要であるという見解もありますが、立法経緯等から判断すると劇場用映画以外に特例的に映画に含まれるものを限定的に規定するものと解釈するのが一般的ですし、判例でも映画の著作物と認める前提で固定性の要件が明確に示されています。
ですから、生放送番組は映画の著作物から除外されることになります。

他方、放送に利用するためにビデオテープに録画した物は映画の著作物に該当することになります。
両者の限界的事例として問題になったのが、スポーツ中継のように放送と固定を同時に行うものです。

東京高裁平成9年9月25日「スポーツ競技テレビ放映権国内源泉所得」事件判決は、著作権に関する訴訟ではありませんでしたが、上記のようなスポーツ競技テレビ放送権に関する税務訴訟において、「固定要件」を充たすかという問題があるが、同時固定される影像について、特別にその著作物性を否定する理由はないと判示しています。

本件は、課税対象となるか否かに関する問題で、著作物と判断した場合には課税対象となることから、著作物性について慎重な検討が行われていないのではないかと思われる節もないわけではないですが、一つの判断基準として意識しておく必要はあろうかと思います。

近時、騒がれていた問題としては、ゲームソフトが映画の著作物に該当するかという問題がありました。
ゲームソフトがプログラムの著作物、写真の著作物等と判断されますと、条文上は第二譲渡については著作権を主張できないと規定されているため、著作者が一度譲渡してしまいますと、その後著作権を主張することができなくなります。

他方、映画の著作物ということになりますと、頒布権という特別の権利が認められ、条文上は頒布権には譲渡のような規定がないため、第二譲渡以降についても著作権を主張して、譲渡を禁止することができると主張されたのです。

この問題は、ゲームメーカと中古ゲームソフト販売店との間で激しく争われました。
東京地裁平成11年4月27日判決は、「同一の連続影像が常に再現されるものであることを要する」とされ、テレビゲームのように、プレイヤーの操作により異なる影像が表出されるものは「映画の著作物」ではないと判断し、二次譲渡しました。

他方、大阪地裁平成11年10月7日判決及び上記判決の控訴審である東京高裁平成13年3月27日判決、上記大阪地裁の控訴審である大阪高裁平成13年3月29日判決は「映画の著作物」を上記のように限定すべきでないとしていました。

そして、最高裁平成14年4月25日判決もインタラクティブ性は事前にプログラムされた範囲内のものであるとして映画の著作物と認められると判示し、一応の決着をみました。

なお、東京地裁平成11年4月27日判決は、映画の著作物ではないことを理由に第二譲渡については著作権が及ばないと判断されましたが、大阪地裁平成11年10月7日判決においては映画の著作物に該当するため第二譲渡にも著作権が及ぶと判断し、全く異なる結論をとりました。

東京高裁平成13年3月27日判決においては、ゲームソフトが映画の著作物にあたるとしても頒布権は配給制度が確立された映画にのみ与えられる権利であるとして、第二譲渡に著作権が及ばないとされたのです。

大阪高裁平成13年3月29日判決最高裁平成14年4月25日判決はゲームソフトに頒布権が認められるものの、この頒布権についても権利の消尽が認められるとして第二譲渡に著作権が及ばないとされました。

この最高裁判決の結果、ゲームメーカは、中古ゲームソフト販売業者に対して、中古ゲームソフト販売を禁止することができるようになりました。この問題は、ゲームメーカが中古ソフトの流通によりゲームソフトの販売数が下落し、ソフト開発費用を回収できなくなるという危機感から訴訟問題に発展しました。

そもそも、頒布権は、映画の性格から映画を録画した媒体が自由に取引されるようになると、映画館に足を運び映画を見ようとする人が少なくなり、映画製作費用を回収できないという事態に陥るために認められた権利です。

仮に、ゲームソフトにおいても映画と同様の経済状況にあるのであれば、最高裁判決は結論として妥当な判決であったということになると思います。

ただ、ゲームソフトの場合にも頒布権という強力な権利を認めなければ、映画と同程度の危機に陥るのかという点については、今後検証を重ねるべきでしょうし、仮に最高裁が判断した投下資本回収の必要性が乏しいということになれば、結論が異なる判決が出ないとも限りません。

この問題は、今後もゲームソフト市場の動向とも関連して検討を重ねる必要がある問題であると考えています。

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