知的財産
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複製権

著作物の有形的再製

著作権法において、「複製」とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいうと規定されています。

また、著作権法では、脚本やこれに類する演劇用の著作物については、上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画することも複製に含まれます。

そして、建築の著作物の場合には、図面にしたがって建築物を完成することも複製に含まれます。

これらは、単なる複製とは明らかに異なりますが、特に侵害されやすい態様のものを列挙して、複製という概念に含めて保護しようとしたものです。

演劇用の著作物については上演することは複製になりますが、音楽の著作物を演奏する行為は、演奏権の侵害にはなりますが、複製権の侵害とはなりません。
演劇用の著作物と建築の著作物については、複製の概念が拡大されていることは注意が必要です。

最高裁昭和53年9月7日「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」判決は
著作物の複製とは、「既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を知覚させる足りるものを再製することをいうと解すべきである。」と判示しています。
この判決以降、複製にあたるか否かは、依拠性が認められるか否か、それを前提に保護の対象となる著作物の内容や形式を知覚することができるか否かを基準に判断されています。

依拠性

まず、複製と言うためには、保護の対象となる著作物に依拠している必要があります。
上記した最高裁判決においても、「既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はない。」と明確に判示しています。

この点が著作権と特許権や意匠権などと異なるところです。
特許権や意匠権などは、依拠せずに権利が及ぶ範囲のものを製造したりすることも認められませんが、著作権の場合は認められるのです。

ですから、複製権侵害を主張する際には、自身の著作物に依拠しているということを主張・立証しなければならないのです。

同一性の程度

複製権の侵害は、表現が完全に一致している必要はありません。

東京地裁平成10年10月29日「SMAPインタビュー記事事件」判決では、「表現が完全に一致する場合に限らず、具体的な表現形式に多少の修正、増減、変更等が加えられていても、表現形式の同一性が実質的に維持されている場合も含まれる」と判示しています。

ただ、上記東京地裁の判決でも示されているように、表現方法に制限がある場合には、内容が似通ったものになりがちです。 そこで、表現方法に制限がある場合には、同一性の判断は、厳格に行われることになります。

複製の範囲

それでは、どの程度の範囲にわたって複製すれば複製権の侵害といえるのか説明します。
同一性の程度の問題が複製の質の問題であるならば、この問題は複製の範囲の問題と言えます。

この点について判示し有名な判決としては、大阪地裁昭和54年2月23日「冷蔵倉庫事件」判決があります。
この判決の事案では、部分的な引用を行った行為が複製権侵害にあたるかが問題となりました。

この点につき上記判決では、「一般に一個の著作物の部分引用は、当該引用部分が原著作物の本質的な部分であってそれだけでも創作性又は個性的特徴を具有している部分についてはこれを引用するものは部分複製をしたものとして著作権侵害を認めるべきである。」と判示しています。

そして、当該部分が本質的であるか否かについては、「具体的又は有形的な表現形式自体についての独創性又は個性的特徴の存否によって決すべきであって、当該原著作物によって認識し、読みとりうる思想又はアイデアのそれを対比検討して決すべきでない。」とも判示されています。

著作権は、具体的な表現物を保護する権利であって、その表現物の背後に存在する思想やアイデアを保護するものではありません。

この点でも特許権とは異なります。
特許権は技術思想を直接保護する権利なのですが、著作権は思想やアイデアを基に現実に表現された物を保護する権利なのです。ですから、著作物の本質的部分を判断するにあたっても、実際に表現されているものを対比検討することになるのです。

また、前記判決では、「部分検討に際しては、単にある部分とある部分とを比較するのではなく、当該部分が一個の著作物全体の表現との関係でその全体に対して果たしている役割をも考慮すべきである。」とも判示していますので、全体における当該部分の位置づけというものにも配慮が必要になってきます。

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