輸入差止申立制度が設けられた理由
知的財産権を侵害する物品の輸入を差止めるには、輸入差止申立が受理され、各税関において取締まりを開始してもらう必要があります。そして、取締まりを開始してもらうためには、税関の認定手続において知的財産権等侵害する認定とのを得る必要があります。
つまり、輸入差止という結果を得るには、申立が受理された上で、税関による審査・検査により疑義貨物を発見してもらい、さらに認定手続により侵害する旨の認定を得る必要があるのです。
権利者からすれば一見迂遠な手続で、申立が受理されれば、さらに認定手続など不要ではないかと思われるかもしれません。
ただ、輸入差止が認められますと、輸入を行おうとする者は、その物品を陸揚げすることができないばかりか基本的に税関において廃棄処分されてしまいます。輸入差止は、輸入を行おうとする者としては、非常に重大な行政処分となります。
ただ、関税法では、知的財産侵害物品、不正競争防止法違反物品を輸出したり、輸入すると7年以下の懲役、または700万円以下の罰金、その両方の刑を科されます。なお、本罪は、未遂犯、未遂にいたるまでの準備段階の行為も罰せられます。
また、輸入した者の事業主である法人に対しても700万円の罰金を科されます。事業主が法人ではなく、人であった場合には従業者ともども行為者として罰せられることとなります。
このように、知的財産権等を侵害する物品を輸入したり、輸入しようとする行為は犯罪行為となりますのでそもそも犯罪行為の対象になるような物を輸入させないに越したことはありません。
そこで、輸入されると実際に損害を被る知的財産権の権利者等に申立権限を与えて知的財産権等を侵害する物品の輸入を差止めるという処分を促す制度となっています。
裁判手続により差止請求が認められ商品や仕掛品の廃棄処分がなされるまでの期間を考えますと輸入差止制度は迂遠であるどころか、非常に迅速な手続であると言っても過言ではありません。
輸入を行おうとする者に与える影響を考えますと、申立手続と認定手続にそれぞれにおいてチェックが加えられるのはむしろ当然のことと理解してもよいのではないでしょうか。