商品等表示の不正使用の請求主体について,消費者が混同して商品を購入する問題については,商品形態模倣において説明したとおり不正競争防止法の対象にはなりませんので消費者が請求主体になることはありません。
他方,開発,製造,卸,流通の各業者が請求主体性を有するか否かについては,商品形態模倣の場合と異なった考え方がとられています。
すなわち,商品等表示の場合には,誰が資本を投下し優先的に回収する必要があるかということが問題になるのではなく,誰の出所を示すものとして当該出所表示が機能しているかということが問題になります。
例えば,特定の商品形態につき,市場が開発者あるいは製造者の表示として認識されているということであれば,開発者あるいは製造者が請求主体となります。
また,卸あるいは流通の業者を示す表示として認識されているというのであれば,卸あるいは流通が請求主体ということになります。
また,複数の業者の出所表示として認識されているのであれば,複数の業者が請求主体ということになります。
ところで,商品等表示については,狭義の混同を意味するのか広義の混同を意味するのかという議論があります。
すなわち,出所表示の混同が単体として存立する企業の出所表示として混同するということまで求められるのか,あるいは資本関係にある企業グループの一員であるとの混同で足りるのか,はたまた,サプライチェーン展開しているグループの一員,商品化などのライセンスを受けた企業グループの一員であることを示す表示としての混同でもよいのかという議論です。
先の例でいえば,後者の例ほどグループ内での横のつながりが薄くなっていきます。
サプライチェーンやライセンスを受けた企業グループの場合には,法的な意味でとらえると何らの関係もないということになり,混同の概念が広がっていきます。
現在の裁判所は,単体の企業との誤認混同にとどまらず,資本関係にある企業グループの一員であるとの混同,サプライチェーン展開しているグループの一員であるとの混同,商品化などのライセンスを受けた企業グループの一員であるとの混同も含まれるという解釈されており,その解釈は定まっています。
したがって,商品形態が表示機能を有する場合には,サプライチェーンに加盟している業者,ライセンス契約のライセンシーについても,商品を供給されているだけにすぎない立場ではあるものの,請求を行っていくことができるということになります。