民法885条では、相続財産に関する費用は、相続財産の中から支払ってもよいと規定されています。
この相続財産に関する費用とは、相続財産の維持・管理にかかる費用のことを指します。亡くなられた方の葬儀費用は、厳密に言いますと相続財産の維持・管理に必要な費用ではありませんが、法律の世界でも葬儀は一般的に必要不可欠な祭事で、当然執り行われるべきものと考えられていますので、相続財産の維持・管理に必要な費用と考えられています。
「葬儀の費用は各共同相続人が、その相続分に応じて負担すべきものである。」という判例がありますが、この判例は、相続財産から直接葬儀費用を捻出することを禁止しているのではなく、葬儀費用に関しては相続人が相続分に応じて平等に負担すべきであり、特定の相続人に負担させてはいけないことを示しているのです。
よって、葬儀費用を亡くなられた方の遺産から支払うことが認められています。
ここで、注意しなければならないのが、銀行など業務との関係です。通常、亡くなられた方の葬儀、その人の預金から支払われることが多いのですが、銀行などに本人の死亡を伝えますと、戸籍と相続人全員の実印を押印した承諾書が必要になり、円滑に出金することができなくなります。