相続・遺言
相続・遺言

相続の基礎知識

人が亡くなると,その人が持っていた財産が,相続人に相続されることになります。

よく勘違いされているのですが,相続の開始には,特別な手続は必要ありません。

法律上,相続は,「人が亡くなる」という事実だけで発生し,人が亡くなったと同時に発生するのです。

たとえば,病院で,皆さんに見守れながら,お父様が亡くなられたとします。この場合,お父様が亡くなり,皆さんが悲しんでいる,まさに,その時に,お父様の財産が,皆さんのもとに相続しているわけです。

相続手続の流れ

遺言書がある場合

亡くなられた方が遺言書を作成していた場合,その人が亡くなられた瞬間に,遺言書に記載されたとおりに相続されることになります。

そして,遺言書に遺言執行者の定めがあれば,その人が遺言書どおりに財産を分配します。

他方,遺言書に遺言執行者の定めがないときには,家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立,家庭裁判所で決定された人が,遺言書どおりに財産を分配することになります。

遺言書は,作成する人が自由に内容を決定することができます。

たとえば,遺言書を作成する人が,全ての財産を,一人のひとだけに相続させたり,遺贈することもできるわけです。

遺言書がない場合

亡くなられた方が遺言書を作成していない場合,その人が亡くなられた瞬間に,全ての相続人で,亡くなられた方の財産を共有することになります。

そして,全ての相続人が,話し合いを行うことで,相続財産を分配することになります。

相続財産の分配は,基本的に,法律に定められた相続分を基準にすることになります。

しかし,法律に定められた相続分を基準にすると不公平になる場合があります。

たとえば,生前に,亡くなられた方の面倒を一生懸命見ていた,生活費を拠出していた相続人がいると,法律で定められた基準で分配すると不公平が生じます。

また,生前に,亡くなられた方から,贈与を受けていた,無償で亡くなられた方の土地を使用していたという場合にも,法律で定められた基準で分配すると不公平が生じます。

このような場合には,どのような割合で分けるのが,公平なのかについて話し合う必要があります。

さらに,亡くなられた方の特定の財産を譲りたくないという相続人が複数いるときには,誰に,その財産を相続させるのかということを話し合いで決めることになります。

相続人の範囲

配偶者相続人とは

配偶者相続人とは,亡くなられた方の,夫あるいは妻のことです。

亡くなられた方に,夫あるいは妻がいると,その人は,必ず相続人になります。

血族相続人とは

血族相続人とは,亡くなられた方のお子さん,お孫さん(ひ孫以降の直系親族を含む。以降も同じ。),ご両親,祖父母(疎祖父母以前の直系親族を含む。以降も同じ。)。兄弟や姉妹,甥御さん,姪御さんまで相続人のことをいいます。

血族相続人には,順位があります。

お子さんがいる場合は,お子さんのみ,お子さんが先に亡くなられている場合にはお孫さんとなります。

お子さん,お孫さんがいない場合には,ご両親,ご両親が先に亡くなられている場合には,祖父母ということになります。

お子さん,ご両親などの直系の継続がいない場合には,兄弟や姉妹,兄弟や姉妹が先に亡くなられている場合には,甥御さん,姪御さんとなります。

相続人の欠格とは

相続人の欠格とは,相続権をもっている人が,その権利を失うことをいいます。

法律には,相続人が一定の行為を行うと,相続権を失うと規定されており,そのような行為を行わないように抑止しているのです。 法律で定められた欠格事由は,次のとおりです。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ,又は至らせようとしたために,刑に処せられた者
  2. 被相続人が殺害されたことを知って,これを告発せず,又は告訴しなかった者。ただし,その者に是非の弁別がないとき,又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは,この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって,被相続人が相続に関する遺言をし,撤回し,取り消し,又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって,被相続人に相続に関する遺言をさせ,撤回させ,取り消させ,又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し,変造し,破棄し,又は隠匿した者

相続人が上に挙げた行為を行うと,相続権を失い,たとえ,遺言があったとしても相続財産を受けることはできません。

ちなみに,相続の欠格に該当する相続人は,相続を受けることができませんが,その人の子が欠格者に代わって相続人となります。

相続人の廃除とは

相続人の廃除とは,虐待,重大な侮辱,その他の非行を受けた場合に,家庭裁判所へ請求することにより相続人の資格を奪うことをいいます。

相続人廃除の方法は,本人で,家庭裁判所に請求する方法と,遺言書に相続人廃除を記載しておき,遺言執行者に家庭裁判所へ請求してもらう方法の二つがあります。

本人が,生前に相続人の廃除を行うと,戸籍謄本に記載されるので,排除された相続人とトラブルになる可能性があります。

このため,遺言書に相続排除について記載しておき,亡くなった後に,遺言執行者に請求を行ってもらうという選択肢があるわけです。

相続人がいない場合

法律では,亡くなった方の配偶者は,常に相続人となり,第一順位の相続人は子供や孫など,第二順位の相続人は両親や祖父母など,第三順位の相続人は兄弟姉妹とその子供が,相続人になると定められています。

仮に,亡くなった方に,これらの親族がいない場合には,亡くなられた方の財産は,国に帰属することになります。

ですから,上記した親族がおられない方については,遺言書で相続財産を受継ぐ人を定めておく必要があるわけです。

相続人の調査方法

相続人の調査は,亡くなられた方の除籍から,亡くなられた方が生まれたときの除籍まで,順を追って取り寄せていく方法で,調査することになります。

ごくまれに,相続人ら知らされていない相続人がいる場合があります。

また,家庭裁判所や地方裁判所で,相続に関する調停や訴訟を行う場合には,亡くなられた方が生まれたときから亡くなられたときまでの全ての除籍を裁判所に提出しなければなりません。

亡くなられたときの本籍地が近隣であったとしても,一つ遡る,もう一つ遡ると本籍地が非常に遠方な場合もあります。

そのような場合には,郵送で除籍を取り寄せるのが一般的です。

相続分とは

相続分とは,複数の相続人がいる場合に,相続財産を受取ることができる割合のことをいいます。

法定相続分とは

法定相続分とは,法律によって定められた相続分のことをいいます。

法律で定められた相続分は次のとおりです。

配偶者がいない場合には,配偶者以外の相続人が,頭数で等分に相続すると定められています。

配偶者がいる場合には,以下の割合になると定められています。

なお,子供,孫など,両親,祖父母など,兄弟姉妹とその子が複数人いる場合には,各割合を,さらに頭数で等分に相続すると定められています。

配偶者2分の1 子供,孫など2分の1
配偶者3分の2 両親,祖父母など3分の1
配偶者4分の3 兄弟姉妹とその子4分の1

指定相続分とは

指定相続分とは,遺言書によって定められた相続分のことをいいます。

遺言書を作成される方は,自由に相続分を定めることができます。

ただし,相続人には,遺留分というものがあります。

従前であれば,相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書を作成すると,相続人の遺留分に応じて,全ての相続財産に対して,遺留分に応じた権利がありました。

この遺留分よって,遺言によって相続した方は,遺留分を持っている相続人の了解が得られなければ,財産を処分することができなかったため,遺留分に関する問題が解決するまで,相続財産が「塩漬け」になるということがありました。

現在では,法律が改正され,遺留分を有する相続人の権利は,相続財産に及ばず,遺言によって多くの財産を相続した方に,金銭の支払いを求める権利しかなくなりました。

この結果,現在では,遺留分を侵害する遺言書によって相続した方は,遺言の執行が完了すると,自由に財産を処分することができるようになり,あとは,金銭により遺留分の清算をすればよいということになりました。

相続分の譲渡・放棄

相続分の譲渡

相続分の譲渡とは,自身の法定相続分を譲渡すことです。

譲渡する相手は,共同相続人でも,全くの第三者でもかまいません。

譲渡は,有償でも無償でも構いませんし,特別な手続も必要ありません。

相続分の譲渡は,契約ですから,口頭の合意があれば成立しますが,後日,トラブルになることがないよう,書面で行っておく必要があります。

相続分の譲渡は,そもそも相続を受けたくない,相続人の中で,より多くの相続を受けて欲しい人がいる,相続のトラブルに巻き込まれたくないという場合などに行われます。

たとえば,あなたの相続分を第三者に購入してもらい,譲受けた第三者に遺産分割の話合いを行ってもらうということも可能です。

他の相続人としては,相続分を譲受けた第三者がいる場合には,その人を遺産分割の協議に加えなければ,有効に遺産分割協議を成立させることができません。

相続の放棄

相続の放棄とは,相続される方が亡くなったことを知ったときから,3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てる方法により,自身の相続権を放棄することをいいます。

財産よりも負債の方が多く相続を受けたくない,相続のトラブルに巻き込まれたくないという場合などに行われます。

相続分の譲渡との違いは,相続放棄は,相続が開始した後でなければできないことと,家庭裁判所に申立てを行う必要があるということです。

相続放棄が,このような厳格な手続を求めている理由は,亡くなられた方が,相続財産が分散することを嫌って,生前に,相続分を放棄させるということが,昔よく行われていたからです。

また,相続分の譲渡では,特定の相続人だけの持分を増加させることができますが,相続放棄では,他の相続人全員に均等に相続分が増加するという違いがあります。

特定の相続人に多くの財産を相続して欲しいと考えるならば,相続放棄ではなく,相続分の譲渡を行うことになります。

まとめ

遺産分割は,相続人の話合いよって成立し,話合いによって成立させることができない場合には,家庭裁判所での調停による話合い,それでもまとまらない場合には,家庭裁判所の審判によって決定してもらうということになります。

法律で,法定相続分というものが定められているのであるから,その通りに分ければ問題が起きないのではないかと考えている方が多くいます。

しかし,法定相続分で分けることが,逆に不公平になることだってあります。

また,相続分について,ある程度,話し合いがまとまっても,誰がどの財産を相続し,その財産を金銭でいくらのものと評価するかなど,難しい問題がたくさんあります。

仮に,相続分について話が決着しても,特定の財産の取り合いや,特定の人が相続することになった財産の評価で話がまとまらず,一から話し合いをやり直すということが発生します。

また,近年では,相続財産が多額ではないのに,相続人の間で,鋭く対立するという事例も多くみられます。

相続が争続とならないためにも,私たちに相談してください。

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