一つの理由として、みなさんの権利意識の高まりがあります。戦後、家督相続制が廃止された後も、長男が一家の財産を相続するという意識が強かったため、他の相続人が相続に際して相続分の財産を要求することが少なかったのです。
また、相続人から不平不満がでたとしても、ある程度の清算金を支払うことによってトラブルになる可能性が少なかったのです。ところが、最近では、みなさんの権利意識が高まり、それぞれの相続分に応じた財産を求めるということが多くなりました。
また、核家族化の進行に応じて、それぞれの相続人が近隣に住み、長年にわたって助け合いながら生活を送ることが少なくなりました。この結果、昔であれば、相続のときに、それぞれの相続人に"遠慮"というものが無くなってしまったという状況があります。
さらに、日本の高度経済成長期を機に、不動産の価格が以前とは比較にならないほど上昇しました。そして、相続財産の主なものは不動産という現状があり、それぞれの相続人が不動産について、それ相応の分与を受けない限り納得できないという事情もあります。
遺産相続がトラブルに発展する理由は、以上に示したものだけに限りませんが、私の経験からいえば、これらの事情がトラブルを複雑にし、解決困難なものとしているといえるのです。