消費貸借契約
消費貸借契約

弁済

弁済

債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは,その債権は消滅することが明記されました(473条)。

第三者による弁済

弁済は第三者が行うことができる(474条1項)のですが,弁済をするについて正当な利益を有さない第三者については,債権者が当該第三者による弁済を望まない場合には弁済を行うことができないとされました(474条3項本文)。

ただし,債権者が,弁済時に,第三者が弁済をすることについて債務者の委託を受けていることを知っていたときは,弁済をするについて正当な利益を有さない第三者は弁済を行うことができます(474条3項但書)。

弁済をするについて正当な利益を有しない第三者が,債務者の意思に反して弁済を行った場合,債権者が,それを知らなかったときは,第三者による弁済が有効であるとされました(474条2項但書)。

弁済の充当

以下の場合に弁済の充当が問題になると整理されました。

  1. 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において,弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき
  2. 債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において,弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付したとき

1.の場合には,弁済をする者は,給付の時に,その弁済を充当すべき債務を指定することができ,弁済をする者が指定をしないときには,弁済を受領する者は,その受領時に,その弁済を充当すべき債務を指定することができるが,弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べれば,その指定効力は失われるとされました(488条1項〜3項)。

1.の場合に,当事者のいずれもが指定しない場合には以下の順序によって充当(法定充当)されることになります。

  1. 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは,弁済期にあるものに先に充当する。
  2. 全ての債務が弁済期にあるとき,又は弁済期にないときは,債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
  3. 債務者のために弁済の利益が相等しいときは,弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
  4. ii及びiiiの事項が相等しい債務の弁済は,各債務の額に応じて充当する。

2.の場合には指定充当をすることはできず,費用,利息,元本の順序で充当され,充当により,その一部が消滅しない費用,利息又は元本については,それが複数あるときには,当事者の指定によって充当することが可能ですが,当事者の指定がない場合には法定充当によることになります(489条)。

なお,弁済をする者と弁済を受領する者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは,それによることになります(490条)。

以上の規定は,一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合(債務を分割弁済する場合等)において,弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときにも適用されます(491条)

弁済の代位

弁済をするについて正当な利益を有するか否かを問わず,第三者が弁済したときには,弁済した者は債権者に代位して債務者に支払いを求めることができるようになりました(499条)。

ただし,弁済をするについて正当な利益を有さない第三者が債権者を代位するためには,債務者に対する通知が必要になります(500条)。
複数の保証人がいるときに一人の保証人が弁済した場合,弁済をした保証人の他の保証人に対する債権者の代位は,保証人間の求償権の範囲に限られることが明記されました(501条2項括弧書)。

一部を弁済した代位者は,債権者の同意を得て,債権者とともにその権利を行使することができ(502条1項),債権者は,一部を弁済した代位者がいる場合であっても,単独で権利を行使することができます(同条2項)。

なお,債権者が行使する権利は,その債権の担保の目的となっている財産の売却代金等について,一部弁済をした代位者が行使する権利に優先します(502条3項)。

保証人,物上保証人,担保物の取得者間の代位の整理

保証人は,保証契約の範囲において保証人の一般財産を引き当てに債権者に対して義務を負い,物上保証人は,提供した担保物件の範囲で債権者に対して義務を負うことになります。

保証人と物上保証人,債務者から担保物件を取得したもの,物上保証人から担保物件を取得した者との間の債権者代位について整理が行われました。

まず,債務者から担保物を譲り受けた者を第三取得者といい,物上保証人から担保物を譲り受けた者と明確に区別されました。

  1. 第三取得者は,担保権抹消のために債権者に弁済を行っても保証人,物上保証人に対して債権者に代位しません(501条3項1号)。
  2. 複数の第三取得者がいる場合,第三取得者の一人は,各財産の価格に応じて,他の第三取得に対して債権者に代位します(同項2号)。
  3. 複数の物上保証人がいる場合,物上保証人の一人は,各財産の価格に応じて,他の物上保証人に対して債権者に代位します(同項3号)
  4. 保証人と物上保証人との間においては,その数に応じて債権者に代位します。
    ただし,物上保証人が数人あるときは,保証人の負担部分を除いた残額について,各財産の価格に応じて,債権者に代位します(同項4号)。
  5. 第三取得者から担保の目的物を譲り受けた者は,第三取得者とみなしてi及びiiが適用されます。
    物上保証人から担保の目的物を譲り受けた者は,物上保証にとみなしてi及びiiiが適用されます。

担保保存義務

弁済をするについて正当な利益を有する者(代位権者)がある場合に,債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し,又は減少させたときは,これによって償還を受けることができなくなる限度において,代位権者は責任を免れます(物上保証人から担保物を譲り受けた第三者及び特定承継人についても同様。504条1項)。

この結果,経営者の交代にともなう旧経営者の保証の解除,担保の差替えや一部解除においても,代位権者の同意がない限り免責されることになり,金融機関等では全ての代位権者の同意を取得する必要があり,担保不動産の第三取得者のように事前に同意を得ることができない場合には,代位権者の免責が問題となっていました。

そこで,債権者が担保を喪失し,又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由がると認められるときは,504条1項が適用されないとされました(同条2項)。
ここで,「取引上の社会通念に照らして合理的な理由」とは,前記したような事例が考えられます。

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