- 空き家の放置が税金対策となる時代は終りました。
- 空き家を放置することの法的リスクを認識しなければなりません。
- 空き家対策は、利用あるいは処分の二つの対策しかありません。
- 共有者がいる場合には共有関係についての法的知識が必要となります。
- 空き屋の解体には自治体から支援を受けることができることがあります。
平成25年10月時点で全国の空き家は約820万戸、全ての建物に占める割合は13.5%(総務省・住宅・土地統計調査)に及んでいます。平成20年に実施された前回の調査で空き家は約756万戸でしたので、この5年間で63万戸が増加したことになり、人口の減少との関係で今後さらに増加していくといわれています。
(総務省統計局平成25年住宅・土地統計調査(速報集計)結果)参照
平成25年、平成20年の都道府県別空室率については以下のとおりです。
都道府県別空き家率(二次的住宅を除く)
平成25年 | 平成20年 | ||
---|---|---|---|
1 | 山梨県 | 17.2% | 16.2% |
2 | 愛媛県 | 16.9% | 14.5% |
3 | 高知県 | 16.8% | 15.7% |
4 | 徳島県 | 16.6% | 14.9% |
5 | 香川県 | 16.6% | 15.1% |
6 | 鹿児島県 | 16.5% | 14.8% |
7 | 和歌山県 | 16.5% | 16.5% |
8 | 山口県 | 15.6% | 14.6% |
9 | 岡山県 | 15.4% | 14.2% |
10 | 広島県 | 15.3% | 13.7% |
平成25年 | 平成20年 | ||
---|---|---|---|
1 | 宮城県 | 9.1% | 13.2% |
2 | 沖縄県 | 9.8% | 9.8% |
3 | 山形県 | 10.1% | 10.6% |
4 | 埼玉県 | 10.6% | 10.3% |
5 | 神奈川県 | 10.6% | 10.3% |
6 | 東京都 | 10.9% | 10.8% |
7 | 福島県 | 11.0% | 12.4% |
8 | 滋賀県 | 11.6% | 11.6% |
9 | 千葉県 | 11.9% | 12.0% |
10 | 愛知県 | 12.0% | 10.7% |
(総務省統計局平成25年住宅・土地統計調査(速報集計)結果)参照
空き家が発生する原因については様々ありますが、中古住宅の流通市場が育っていない、金融機関による中古住宅の査定が十分ではなくローンを組んで中古住宅を購入することが困難であることが主な原因であると言われています。
そして、土地上に建物がある限り土地の固定資産税や都市計画税が大幅に軽減されることも影響して、空き家として放置される住宅が増加する原因となっています。
ところが、平成26年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家対策特措法)が制定され(平成27年2月28日施行)、「特定空家等」に認定されてしまいますと固定資産税や都市計画税の軽減措置を受けることができなくなりました。
また、空き家の所有者は、過失の有無にかかわらず、建物の倒壊や一部損傷により他人の財産を毀損し、あるいは人を傷つけた場合には損害賠償義務を負わなければなりません。特に、人を傷つけた場合には多額の損害賠償義務を負うことになりますので、空き家として放置することの法的リスクは無視することができません。
空き家を放置していますと税金や維持費などのコストがかかるだけでなく、所有物件が原因で人に損害を加えた場合には損害賠償義務を負担することになるため、第三者に譲渡することによりこれらを回避する、あるいは積極的に利用することにより人に損害を与えることを回避する、さらには保険契約を締結して「万が一」に備える必要があります。
相続が原因で共有関係にあるために空き家が放置されているという例が少なくありません。 これは、共有関係にある以上「共有者全員が同意しなければ何も手をつけることができない」という誤った理解が共有者間で共有されているからです。
共有物は対象物に施す内容によって、共有者全員の同意がなくても、単独であるいは多数決によって行うことできるものがあります。
また、共有者には共有物分割請求権が認められており、ときには対象物件を競売にかけることもできます。
このような共有者に認められる権利を巧みに利用して、共有物件を放置するのではなく積極的に利用するあるいは第三者に譲渡する方向にもっていかなければなりません。
国土交通省と総務省は荒れはてた空き家の撤去を促すための指針をまとめ、自治体は実施計画を策定しています。そして、空き家解体を促すために解体費用の助成を行っている自治体も多数存在します。
利用、処分のいずれも選択できない場合には、朽廃した建物から発生する損害の発生を未然に防止するため建物の解体を検討しなければなりませんが、解体に際しては各自治体が設けている解体費用の助成制度を確認し、費用負担を可能な限り軽減することも検討しなければなりません。
空き家問題は、単なる税負担の増加だけの問題ではなく法的リスクが付きまとう問題であることを認識しなければなりません。また、空き家を長期間放置すると、積極的に利用するにあたり費用が増大する、法的リスクが増大するということも認識しなければなりません。
また、共有関係にある空き家については、共有に関する法律の知識を身に付け、あなたのイニシアチブで問題解決に取り組まなければならないという意識をもつ必要があることを忘れないでください。