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退職代行サービス

cont_img_85.jpgみなさんは,「退職代行サービス」という言葉をご存知ですか。 文字通り,退職を希望する従業員に代わって,退職手続の代行を行うサービスのことです。

NHKの「クローズアップ現代」で取り上げられたことで注目されるようになり,現在では,複数の業者がインターネット上で広告を出しています。

一般的な退職代行サービスの流れは,以下のとおりです。

  • 業者の担当者が電話やLINEで,退職理由や退職交渉の状況等をヒアリング
  • 料金振込み
  • 業者が退職届の提出(退職理由の説明),制服の返却等,退職に伴って必要になる事務手続を代行

日本では,突然の退職は従業員のわがまま,将来のキャリアに影響する等のマイナスのイメージが強く残っていること,退職によって同僚等に迷惑をかけるという思いが先行し退職を切り出せないという雰囲気があること等から,退職代行サービスが求められる土壌があるのではないかと思います。

突然,会社に来なくなった従業員のデスクを確認すると,未処理の書類が沢山積みあがっていることもあり,退職の意思を自分で伝えることができないという場合もあるのではないでしょうか。

以前は,労働基準監督署等に対する相談も,不当な解雇や退職勧奨が行われたという内容のものが多かったのですが,最近では,会社が退職を認めてくれない等の退職に関する相談の方が多くなっているようです。

退職代行サービスを利用すれば,問題なく簡単に直ぐ辞めることができるというイメージがつきつつありますが,法律上,従業員が退職を望めば即日に退職することができるというふうにはなっていません。

会社との間で働く期間を定めずに契約した場合,退職届の提出は2週間前までに行う必要があります。 2週間前までに退職届を提出していなくても退職することができるのですが,会社から損害賠償を請求されるリスクがあります。

なお,期間によって給料が支払われる場合,期間の前半までに退職届を提出しなければならず,6ヶ月以上の期間によって報酬を定めた場合には,3ヶ月前までに退職届を提出する必要がありますが,多くの方は月給制ですので,2週間前までに退職届を提出していればよいことになります。

会社との間で働く期間を定めて契約した場合には,労働開始の日の1年間は,原則的に契約期間の途中での退職はできず,やむを得ない事由があるときのみ退職が認められます。

ここで,やむを得ない事由には,「妊娠・出産・育児」,「家族の介護」などの個人的な事情や,賃金の全部あるいは一部の未払い,月に100時間を超える残業がある等などの会社の行為を挙げることができます。

そして,契約の継続が困難になった理由が働いている方の過失によって発生した場合には損害賠償義務を負うことになりますので注意が必要です。

従業員が退職する場合,上記した法律の定めに従う必要があるのです。

逆に,就業規則で,これらの期間より以前に退職の届を提出するように定められていたとしても,それに拘束されることはありません。

また,未消化の有給休暇がある場合には,残っている有給休暇が消化される日をもって退職することを伝えれば,退職届を提出してから会社に出勤せず,有給休暇消化後に退職する(たとえば,15日間の有給休暇を持っている方であれば,退職日を15日後と定めて退職届を提出し,会社に出勤しない)ということもできます。

退職代行サービスを利用するにあたり注意しなければならないのでは,就業規則等で,退職届を人事部部長等に直接手渡ししなければならないという規定が設けられていたり,退職日から遡って14日間は業務の引継ぎのため現実に就労しなければならない(未消化の有給については買取る)という規定がある場合です。

本人が退職届を直接交付しなければならないという規定は,例外的な場合を除いて不合理な規定とは言えませんし,会社には有給休暇取得日の変更権がありますので,現実に業務の引継ぎが必要な場合であれば不合理な規定とは言えません。

これらの規定がある場合には,退職にあたって検討が必要になります。

以上のとおり,退職届を提出するという行為であっても法律の知識が必要になり,また,会社と協議が必要になることも少なくありません。

この結果,問題となるのが,「退職代行サービス」が弁護士法72条(非弁行為・懲役2年以下あるいは罰金300万円以下の罰則あり。)にあたらないのかという点です。

弁護士法72条では,「弁護士又は弁護士法人でない者は,報酬を得る目的で訴訟事件,非訟事件及び審査請求,再調査の請求,再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定,代理,仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い,又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし,この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は,この限りでない。」と規定されています。

退職代行業者が退職代行サービスを行ってもよりという法律はありません。 この結果,「退職代行サービス」が「その他一般の法律事件」に関する「その他の法律事務を取り扱い」にあたらないのかという問題が発生するわけです。

「その他一般の法律事件」とは何かについて定まった基準が設けられておらず,いろいろな説明が行われているところです。

最高裁では,問題となった行為が「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」ことを理由に弁護士法72条に違反すると判断されたことがありますが,これは,「その他一般の法律事件」の判断基準を示したものではありません。

日弁連では,「その他一般の法律事件」の判断にあたって「法的紛議が生ずることがほぼ不可避である」という要件は必要ないという立場をとっています。

退職にあたっては,法律の定めや会社に設けられている就業規則,時間外労働賃金等の問題が関わっており,交渉が必要になる場合が少なくありません。

退職代行サービスを利用すれば,簡単に直ぐ辞めることができるという発想は捨てた方がよいと思います。

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