かの室戸台風級とも言われる大型の台風21号の被害がここ大阪でも続々と報告されています。
台風の大風はそこらじゅうの物を吹き飛ばしこれが人や物にあたって損害が拡大します。
これに雨が伴い河川が氾濫するとその被害は点から面へと一気に広がることになります。
今回の台風21号では,関西の空の玄関口である関西国際空港が水没し,また連絡橋にタンカーが衝突するなど文字通り孤島と化した状況となり,電気も使えないなど,乗客・職員の安全が心配されているところです。
しかも連絡橋の復旧など空港機能の回復に時間がかかれば,物流の面でも深刻な影響が出るでしょうし,アジアからのインバウンドの入口である関西国際空港が機能しなければ,近時,関西全体で力を入れている観光にも大きく影を落としそうな状況です。
今回,マンションの屋根やクレーン,貯水槽と言った屋上施設が風で煽られては浮き上がり,落下して他人の建物や自動車等を損傷したりするケースがSNSなどで散見されました。
或いは工事中のビルやマンションの足場が崩れてその下敷きになる被害も懸念されます。
このような場合,例えば建物であれば火災保険,自動車であれば車両保険に入っていれば,保険会社の規定に従うことにはなりますが,ある程度,保険金でカバーされることと思います。
逆にこういった保険に入っていない場合には大変困ったことになります。
本来的には,自然による災害であり,特定の第三者にやすやすと責任を追及できるものではありません。
しかしながら,設備の設置・保存や設計そのものに問題があった場合には,方法がないわけでもありません。
例えば,設備が老朽化していたり,足場の設置強度が不十分であった場合,被害者としては,設備の使用者,所有者,工事業者,或いは設置物の製造業者に責任を問いたいと考えるかも知れません。
このように土地に設置された工作物に設置・保存上の瑕疵のある場合,工作物責任(民法717条)といった特別な責任を問える可能性があります。
通常,不法行為として第三者に損害賠償を求めるには,損害の発生に関して,故意や過失というものが必要となるわけですが,この工作物責任においては,土地の工作物(建物などを含む)の設置や保存に瑕疵があれば,それだけで,その占有者や所有者に賠償責任が認められることになります。
特に,所有者については過失がなくても責任を負うことから,「設置又は保存に瑕疵がある」とはどういうことなのか,と言う点が問われることになりますが,これについては「通常備えるべき安全性が欠けていれば瑕疵がある」と言うように言われております。
そうなると台風や地震と言った自然災害の場合はどうなのかという疑問が出てきます。
この点,明確な基準があるとは言えませんが,通常起こりうる,地震や台風に対し,備えるべき安全性を欠いていれば「瑕疵あり」と言い得るように思われます。
例えば,ボルトが緩んでいた,腐食劣化が進んでいたといった状況があれば,「瑕疵」が認められやすくなるでしょう。
もっとも,事故前の状態についての立証の壁は残りますし,自然災害が直接の原因となる場合には責任を減額する裁判例(神戸地方裁判所・平成11年9月20日判決)もあります。
その他,屋外に設置されることを前提とした設備であるにもかかわらず,設計上,一定の風雨などに耐えうる程度の想定をしていないような場合には,製造業者に製造物責任が認められることもあるでしょう。
何か気がかりな点がある場合は,自然災害と諦める前に,弁護士に相談してみるのも1つの方法です。