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【経産省 指針改定】外国の公務員に対する贈賄防止 新指針

刑法で禁止されている贈賄は、日本の公務員に対して金銭や利益を供与する行為であり、金銭や利益供与の対象が日本の公務員でない限り刑法による処罰が行われることがありません。

しかし、不正競争防止法では、外国の公務員に対する金銭や利益の供与が禁止されています。

不正競争防止法により刑罰が科される外国公務員に対する贈賄は、

  1. 国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために
  2. 外国公務員に職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又は、その地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として
  3. 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をする

ことが、これにあたります。
してはならない。

そして、外国公務員には、

  1. 外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者
  2. 公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者
  3. 一又は二以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の百分の五十を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者
  4. 国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。)の公務に従事する者
  5. 外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者

が含まれます。

st210.jpgこれらの公務員等に、先に定める目的で金銭や利益を供与した場合には、5年以下の懲役、あるいは500万円以下の罰金、あるいはこれらが併科されることになります。

外国公務員に対する利益供与の取締りは、アメリカや欧州諸国の要求により日本においても法律上規制されるようになりましたが、特にアメリカは、国際取引の公正さを阻害するものとして世界中で取り締まりを厳しくしており、日本の企業やその従業員が摘発されるという例も珍しくありません。近年では、インドネシアの発電所受注を巡り同国の公務員に贈賄したとして日本の企業がアメリカ司法省に対して8,800万ドルの罰金を科せられたという事例がありました。

また、英国も外国公務員に対する贈賄については問題視しており、現在開かれているG7においても根絶を呼びかける予定にしており、主要国において、外国公務員に対する贈賄の規制が強まる傾向にあります。

他方、企業としては、どこまでが商慣習的に認められる行為であるのか、あるいは法律により規制されることになるのかの線引きが曖昧で分かりにくいという指摘がされているところです。

これを受けて経産省は、アメリカ司法省の基準も参考にしながら、平成27年夏ごろに、慣習上許される行為と贈賄との線引きを行う指針を改定すると発表しました。

今般の指針改定では、外国公務員に対する贈賄のナショナルスタンダードが日本においても確立されるものであると期待されています。

今夏の経産省による指針改定には注意を要するところです。

弁護士 冨宅恵

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