名誉棄損とは、不特定多数の者に対して、ある人の社会的評価を貶める犯罪行為です。事実に反する誹謗中傷が名誉棄損にあたることは当然のことながら、事実の指摘であっても、政治家等の公人の場合を除き名誉棄損に該当します。
名誉棄損は、上記のとおり犯罪行為であり、3年以下の懲役または禁錮、50万円以下の罰金に処せられます。
また、社会的評価を貶められ、あるいは精神的苦痛を被ったことによる損害賠償請求も可能となります。
メーリングリストによる名誉棄損
メーリングリストは、予め登録された限られたメンバー間で、一斉にメール交換できるシステムです。
それでは、このメーリングリストによる名誉棄損が、犯罪行為になったり、損害賠償の対象となるのでしょうか。メーリングリストは、予め限られたメンバーの間でメール交換を行うため、不特定多数に向けた行為であるといえるかが問題となるのです。
メーリングリストは、予め限られたメンバーの間でメール交換が行われるのですが、招待メールを送り、受信者が参加する旨のメールを返信するだけで容易に参加できるシステムになっています。
メーリングリストであれば限られたメンバーの間でのやりとりとは、必ずしもいえませんので、名誉棄損が成立可能性が非常に高いといえます。
東京地裁平成9年5月26日「ニフティサーブ事件」判決では、名誉棄損の発信者と電子掲示板の管理者に対して、名誉棄損による損害賠償責任が認められました。なお、電子掲示板の管理者に対する責任については、管理者が発言内容を削除したこともあって、東京高裁では否定されました。
プロバイダー責任制限法が制定され、プロバイダーの責任が制限されるとともに、一定の手続を経た上で有害記載を削除することが認められ、被害者の権利救済に一定の協力が求められるようになりました。
ただし、電子掲示板の管理者は、プロバイダーと言えるか否かについては解釈が定まっていませんので、必ずしもプロバイダー責任制限法の適用を受けることができるか明白ではありません。
まず、被害者としては、発言者に対して警告を行うとともに、メーリングリストの管理者に対しても名誉棄損にあたるメールが存在することを指摘し、管理者による対処を求めていく必要があるでしょう。
チェーンメールによる名誉棄損
チェーンメールとは、友人から友人へ次々にメールが転送されるシステムのことです。チェーンメールは、メーリングリスト以上に、不特定多数にメールが受信される可能性が高いため、名誉棄損が成立可能性も高まります。
それでは、チェーンメールの送信を媒介したプロバイダーに対して責任を追及することは可能でしょうか。
メールの送信を媒介したプロバイダーは、電子掲示板やメーリングリストの管理者とは明らかに異なり1日に数億通のメール送信を媒介しており、そのメールの中から名誉棄損に該当するメールを探し出し、送信を停止することが不可能な状況にあります。
よって、単にメールの送信を媒介したに過ぎないプロバイダーに対して名誉棄損の責任を追及することはできないものと思われます。