医療過誤

医療過誤

肝硬変の患者への治療

  • 肝硬変の患者に適切な治療を行わなかった注意義務違反
  • 東京地裁平成15年5月28日判決の事例を参考
  • 800万円の支払いを命じた事例

ケース

【入院の経緯】

私の夫は、2年前くらいから、今回夫が亡くなった病院に入通院を行ってきました。
夫は、10月25日午後11時ころ、タール便や吐血があったことから、近所の病院で診察を受けましたが、翌26日午前0時30分ころ、今回夫が亡くなった病院に運ばれました。

【病院の診断】

入院先の病院で、検査を行ってもらったところ、食道静脈瘤が認められるが既に止血している、再出血をすれば重篤な状態になるなどの診断を受けました。

検査の内容は次のとおりです。

1時10分ころ   心拍数、血圧及び呼吸数

1時30分ころ   心拍数及び血圧

2時10分     心拍数、血圧及び呼吸数

6時及び同日10時 心拍数、血圧及び体温

14時       心拍数及び体温

17時       心拍数、血圧及び体温

夫は、10月26日午前3時ころ、外科に移されて治療を受けていました。
8時30分ころ、夫が自分で抜去した輸液ラインが、11時ころまで抜けている状態が続いていました。

夫は、未明から夕方にかけて意識状態が次第に悪化していき、再三不穏な言動等も認められるようになりました。
そして、夫の容態は、次第に悪化し、10月26日午後5時ころには呼びかけに対しも返答がない状態になり、その後も好転せず、翌27日午前1時ころ、心拍数が低下して呼吸停止状態に陥り、同日午前4時10分に亡くなりました。

ところが、主治医は午前11時30分まで決まらず、主治医が決まってからも病室を訪れて病状を観察することはなく、研修医が指示をだしており、さらにその研修医も夫の様子を見に来たのは、午後5時30分過ぎのことでした。

また、主治医は、午後8時ころ、「明日状態が許せば検査をする、今日は帰宅してもよい。」などと説明していました。

質問

夫は、入院直後から適切な処置を受けていたら死なずに済んだと思うのです。
長い間主治医もつけずに適切な治療もしなかった病院の責任はないのですか?

説明

【症状の説明】

食道胃静脈瘤とは、門脈圧亢進による下部食道壁内静脈叢、左胃静脈、脾静脈の鬱血により静脈瘤が形成されるものです。
主たる原因は、肝硬変であり、食道静脈瘤からの出血は、重篤な上部消化管出血の一つであるとされています。

肝硬変の症状として、肝機能不全と門脈圧亢進が認められ、肝硬変が進行すると、血中アンモニアは増加し、消化管出血によっても、血中アンモニアは増加します。

肝性脳症は、種々の重篤な肝障害が原因で生じる意識障害を主症状とする精神神経症状です。
肝性脳症には、指南力の低下あるいは異常行動などの軽度のものから、刺激を加えても全く反応しない深昏睡のものまである。
古くからアンモニアが肝性脳症の主な中毒因子であることが知られていますが、アンモニアのみでは肝性脳症の発生機序を説明しきれないのも事実です。
そこから、アンモニアを始めとする種々の物質の濃度の異常が作用して肝性脳症が生じるといういわゆる多因子説が一般的に受け入れられています。

【東京地裁の判断】

食道静脈瘤からの出血こそ止まっている状態ではあったが、再出血があれば致命的な事態になることが十分予想されていたものであるのにもかかわらず、バイタルサインや尿量のチェックを怠り、主治医の決定時期も遅れ、病状の把握も不的確であり、旦那さんの全身状態の把握、経過観察の点においていずれも不十分であったと認定しました。

そして、病院側には、血液検査、血液ガス検査、尿量計測及びバイタルサイン測定の各検査を適宜実施する義務を懈怠した過失が認められ、全身状態の把握や経過観察を十分に行うべき義務を懈怠した過失があると判断しました。

また、高アンモニア血症の治療については、旦那さんが肝不全による高アンモニア血症を原因とする肝性脳症を来していたと考えられることを前提に、病院が実際に行ったアンモニア血症に対する治療より、強力な高アンモニア血症の治療を行うべきであったと認められるとし、病院側に迅速かつ強力な治療を怠った過失が認められると判断しました。

ただ、肝不全による高アンモニア血症由来の肝性脳症による脳浮腫、脳ヘルニアによって呼吸停止に至ったことや非ケトン性高浸透圧性糖尿病性昏睡を合併していた可能性が考えられるが、病理解剖が行われておらず、入院後わずか24時間で急変し、呼吸停止を起こした原因について、基本的には不明であるとされていること、肝不全の急速な増悪によって発生したサイトカインが血管を拡張し、脳浮腫を亢進させ、これに腎不全、糖尿病、代謝性アシドーシス等が複雑に絡み合って非常に重篤な肝性脳症が発生した結果死亡するに至ったとの証言があることから、死亡の原因を明確に特定することはできないとして、前記した病院側の過失行為と旦那さんの死の結果との因果関係を否定しました。

この結果、裁判所は、800万円の支払いを命じました。

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