定型約款準備者の表示義務
定型取引を行い,又は行おうとする定型約款準備者は,定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方(顧客)から請求があった場合には,遅滞なく,相当な方法でその定型約款の内容を表示しなければなりません(548条の3第1項本文)。
定型約款の内容を示す「相当な方法」としては,書面又は電子メール等で送付する方法,面前で定款を示す方法のほか,自社のホームページに掲載しておき,請求があった場合にホームページを閲覧するように促す方法(請求者がインターネットで閲覧することができない環境にあることを主張している場合には,相当な方法と評価されない可能性があります。)等が想定されています。
ただし,定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し,又はその内容を記録したCD,DVDなどの電磁的記録を提供していたときは応じる必要がありません(548条の3第1項但書)。
取引を開始する前に相手方から定款約款の表示請求が行われているにもかかわらず,定型約款準備者が,これを拒絶していた場合には,一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合を除いて,定型約款の個別の条項について合意をしたものとはみなさないとされています(548条の3第1項第2項)。
定型約款準備者による拒絶は,明示的な場合に限らず,相手方から表示請求が行われているにもかかわらず,相当期間放置していることにより拒絶しているものと評価される場合が含まれると考えられています。
なお,定型取引合意の後相当の期間内に相手方から表示請求が行われたにもかかわらず,定型約款準備者が拒絶した場合には,415条に基づき,強制的な履行,損害賠償を求めることができます。