不当条項規制
相手方の権利を制限し,又は相手方の義務を加重する条項については,定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは合意しなかったとみなされます(548条の2第2項)。
定型取引の態様
定型取引は,相手方(顧客)が契約の細かな内容に関心をもつことがなく,その内容を認識しないままに契約を締結することが一般的であるという特質があります。
このような定型取引の特質を考慮するならば,相手方(顧客)が客観的にみて予測することが困難で,かつ,その条項が相手方に重大な不利益を課すものであるときは,相手方(顧客)においてその内容を知り得る措置を講じておかない限り,不意打ち的な条項として信義則に反することとなる蓋然性が高いと考えられています。
定型取引の実情
定型取引がどのような社会的・経済的活動に関して行われているか,当該取引において条項が設けられた理由や背景,当該取引における当該条項の位置づけ(当該条項と他の条項とのバランス)が取引の実情として具体的に考慮されることになります。
取引上の社会通念
当事者間の衡平を図る観点から,広くその種の取引において一般的に共有されている常識にも照らして判断されることになります。
不当条項の例として,相手方に対して過大な違約罰を求める条項,定型約款準備者の故意・重過失による損害賠償責任を免除する条項,不当な抱合せ販売条項等が考えられますが,不意打ち的な条項となっているか,内容的不当性の程度,広くその種の取引において一般的に共有されている常識に基づいて判断されることになります。
不当条項であるか否かの判断は,契約を締結した相手方ごとに行われるため,特定の相手方との間では不当性が認められたとしても,他の相手方との間では不当性が認められないということがあります。