- 湯たんぽの取扱いに関する過失
- 東京地裁平成16年2月16日判決
- 66万円の支払いを命じた事例
ケース
私は、平成13年10月17日、全身麻酔を施され、右膝の手術を受けました。
看護師は、午後1時すぎころ、手術後に私が横になるベッドを暖めるため、湯たんぽをネル地の湯たんぽ用の袋に入れて袋の口を絞り、さらにバスタオルを巻き付けて、ベッド内の中央付近に入れました。
午後1時25分、私が手術を終えてベッドに移された時には、湯たんぽは私の身体から離してベッド下方の端に移動されました。
ところが、私の身体が動いて、私の左下肢の外側が湯たんぽに接触していました。
また、私の左下肢が湯たんぽに接触している間に、湯たんぽに巻き付けれれていたバスタオルがはがれていました。
私は、麻酔の影響で両下肢にはしびれがあり、知覚も鈍麻していたため、左下肢が湯たんぽに接触していることに気づかず、午後2時に看護師が湯たんぽを取り出すまでの間に、湯たんぽの熱によって左下肢の外側に熱傷を負いました。
左下肢の熱傷は、平成14年4月には治癒しましたが、縦10?、横5?の瘢痕が残りました。
質問
私は、下肢がしびれた状態で熱を感じ取ることができなかったわけですから、看護師としては、湯たんぽが私の下肢に接しないようするか、バスタオルを湯たんぽからはがれないようにすべき義務があったと思います。
看護師には責任はないのですか。
説明
裁判所は、湯たんぽにはタオルが巻き付けられていたが、その巻き方が不十分で、患者の体動によりタオルがはがれたために、ネル地の袋に入った状態の湯たんぽが原告の左下肢に接触して、そこに熱傷が生じたものと認定しました。
そして、湯たんぽで寝具を温めることは、手術により低下した患者の体温を回復させるために必要な看護行為と考えられるが、熱傷の防止措置に不十分な点が認められ、看護師には湯たんぽの取扱いに関して過失があったと判断しました。
そして、熱傷の通院治療、瘢痕が残ったことの慰謝料等として66万円の支払いを命じました。